〜高齢者から小児まで、「食べる・話す」を支える新しいチーム医療〜

■ 高齢者医療で注目される「口腔機能ケア」

高齢者の死因の上位に挙げられる誤嚥性肺炎。その一因は、加齢や疾患による口腔機能の低下です。
これまで「誤嚥性肺炎の予防=口腔ケア」という考えが一般的でしたが、近年では「機能訓練」との両輪が注目されているのをご存知でしょうか。

歯科衛生士による口腔清掃で細菌数を減らし、感染を防ぐことはもちろん重要です。
そこに、「噛む・飲み込む・話す」といった動作の維持・改善を目指す言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)の関与が加わることで、より包括的なサポートが期待できるのです。

■ 歯科衛生士と言語聴覚士ではアプローチが異なる

歯科衛生士が担うのは、歯や歯肉のケアによる口腔内の衛生的アプローチ
一方、言語聴覚士は、口や舌・咽頭などの筋肉を鍛えることで機能的アプローチを行います。

たとえば、誤嚥を防ぐための嚥下訓練や、食事動作の再学習、発声・構音の改善など。
訓練は、実際に食べ物を使う「直接訓練」と、筋トレやマッサージを行う「間接訓練」に分かれます。
訪問歯科の現場でも、言語聴覚士が同行し、在宅患者のQOL向上に貢献するケースが増えています。

■ 小児分野でも重要な役割を果たす

言語聴覚士の役割は高齢者だけではありません。
小児領域においても、口腔機能発達不全症の対応で力を発揮します。

たとえば、

  • 口呼吸や食べこぼしが多い
  • 「さ」行や「き」行などの発音が不明瞭
  • 麺類をうまくすすれない

こうした症状の背景には、口腔周囲筋の使い方の問題が関係している場合があります。
口のまわりの筋肉をトレーニングすることで、咀嚼や嚥下、発音の改善が期待でき、歯列や咬合の安定にも寄与する可能性があります。
そのため、矯正治療の一環として言語聴覚士が関わるケースも見られます。

■ 言語聴覚士との連携で、医院の価値を高める

「歯科衛生士×言語聴覚士」という連携は、患者満足度の向上や医院の差別化につながる可能性があります。
高齢者には機能維持・嚥下支援、小児には発達支援と矯正補助――幅広い年代の口腔機能に対応できる医院としての信頼を得ることができます。

また、言語聴覚士の採用に関しては、歯科医院が求人を出すケースが増加傾向にあります。
背景には、

  • 高齢者の口腔機能改善ニーズの高まり
  • 小児矯正や発達支援分野の拡大
    が挙げられます。

STの給与相場は、地域や経験により差はありますが、一般的に月給22〜35万円程度が目安とされています。
病院・介護施設などでの経験を経て、歯科領域に関心を持つSTも増えており、「リハビリ+歯科」の新しい形として注目されているのです。

■ まとめ 〜チームで支える「食べる・話す・生きる」〜

歯科医療は、今や「治す」だけでなく、「生きる力を支える医療」へと広がりを見せています。
言語聴覚士との連携は、その一つの形といえると思います。

「食べる」「話す」「笑う」――そのすべてを支えるために。
多職種と連携しながら、患者さん一人ひとりのQOLを守る。
そんなチーム医療のかたちが、これからの歯科医療には求められているように感じます。

言語聴覚士の採用をお考えの先生は、お気軽にご相談ください。

参考:
日本言語聴覚士協会公式サイト