ある矯正歯科の医院から、「ホームページに掲載している資格表記を修正したい」という相談を受けました。
きっかけは、日本矯正歯科学会 認定医委員会からの指摘です。
一見、問題なさそうに見える表記でも、医療広告ガイドラインのルールを確認すると修正が必要な場合があります。今回はこの事例をもとに、歯科医院が注意すべきポイントを整理しました。
1. 資格・肩書きの表記は最新ルールを必ず確認
医療広告ガイドラインに基づく現状(2024年9月時点)
以下の歯科専門医資格については、“広告可能な専門医資格”として、厚生労働省および日本歯科専門医機構により正式に認められています(2024年9月時点):
- 日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医
- 日本歯周病学会認定 歯周病専門医
- 日本歯科麻酔学会認定 歯科麻酔専門医
- 日本小児歯科学会認定 小児歯科専門医
- 日本歯科放射線学会認定 歯科放射線専門医
- 日本補綴歯科学会認定 補綴歯科専門医(2023年10月広告可能化)
- 日本矯正歯科学会認定 矯正歯科専門医(2024年9月広告可能化)
- 日本歯科保存学会認定 歯科保存専門医(2024年9月広告可能化)
⚠️ 注意
専門医資格を広告する際には、次のようなルールを守る必要があります:
「認定団体名+専門医資格名」の併記が必須
例:「日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医」と記載する必要があり、単に「口腔外科専門医」とだけ表現するのはガイドライン違反です。
「日本矯正歯科学会認定 矯正歯科専門医」という正式表記であっても、現行ルールではホームページ広告には使用できません。
2. 治療費の明示
矯正治療は自由診療のため、費用を明確に提示することが重要です。
- 検査料・診断料・治療費・調整料などを段階ごとに表記
- 患者さんに不明瞭な情報を与えない
透明性を保つことで、信頼性が高まりトラブルを防げます。
3. 自由診療であることの明示
「矯正歯科治療は公的医療保険適応外の自費(自由)診療です」と明記しましょう。
これはガイドラインで義務付けられています。
4. 治療期間・通院回数について
治療期間や通院回数は患者さんの状態や治療計画によって大きく異なります。
「治療期間は約24〜36か月、通院回数は24〜36回」といった形で、一般的な目安を掲載することも推奨されます。
ただし、個人差があることを必ず明記しなければなりません。
- 「治療期間や通院回数は患者さんによって異なります」
- 「詳細は診察時にご説明いたします」
このように記載することで、患者さんに誤解を与えず、法的リスクも回避できます。
5. 副作用・リスクの提示
矯正治療には以下の副作用が発生する場合があります。
- 歯の移動に伴う痛み
- 歯肉の腫れ
- 装置による口腔内違和感
メリットだけでなくリスクも明示することで、患者さんの信頼につながります。
まとめ
今回の医院事例から、歯科医院がホームページで注意すべきポイントは以下の通りです。
- 広告不可資格は掲載しない
- 治療費を明確に表示する
- 自由診療であることを必ず記載
- 治療期間や通院回数は患者ごとに異なることを明示
- 副作用・リスクも併せて提示
✅ ポイント
- 矯正歯科専門医など現行ルールで広告不可の資格は掲載してはいけません
- ホームページは患者さんに情報を提供するだけでなく、医院の法的リスク回避にも直結します
歯科医師・医院経営者の皆様は、定期的にホームページ内容を見直し、最新ガイドラインに沿った表現になっているかを確認することをおすすめします。