2025年度、育児・介護休業法が大きく改正されます。
「うちは小規模な歯科医院だから関係ない」と思われる先生もいらっしゃるかもしれませんが、今回の法改正は従業員数にかかわらず、すべての事業所が対象となります。
特に育児中のスタッフが多い歯科医院では、今回の法改正への対応がスタッフの定着や離職防止に直結する重要な経営課題になる可能性があります。
本記事では、2025年4月・10月に段階的に施行される改正内容と、それに対して歯科医院で準備すべきことをまとめました。
改正のポイントと時期
2025年4月〜
- 子の看護休暇の対象年齢が小学校3年生修了までに拡大
- 残業免除の対象が「小学校就学前の子を養育する労働者」に拡大
- 柔軟な働き方(テレワーク・時短など)導入の“努力義務化”
2025年10月〜
- 上記の柔軟な働き方のうち、2つ以上の制度導入が“義務化”に
- 復職予定者への「個別意向確認」の義務化
- 男性育休取得率の公表義務(従業員300人超の医院のみ)
歯科医院として特に注意したいポイント
◆ 子の看護休暇の拡大
これまで「小学校入学前まで」だった対象が、「小学校3年生終了まで」に広がります。
また、休暇理由も多様化し、「学級閉鎖」「登園・登校しぶり」「保護者会や卒園式の参加」なども含まれるようになります。
歯科医院でも、こうした事情で突然の休みが必要になることを想定し、代替体制の整備やシフトの柔軟化を検討する必要があります。
◆ 残業の免除対象が広がる
これまで残業免除の対象は3歳未満の子を持つスタッフのみでしたが、今後は「小学校就学前」までの子を養育するスタッフが対象になります。
患者対応の都合で、どうしても「少し残ってもらう」ことが常態化している医院も少なくないかもしれませんが、対象スタッフに残業をお願いすることが法律違反となる可能性もあるため、注意が必要です。
◆ 柔軟な働き方の制度導入(選択制措置)
2025年10月からは、以下のうち2つ以上の制度を導入し、スタッフが選べるようにすることが義務化されます(3歳未満の子を養育する従業員が対象)。
- テレワーク
- 時差出勤
- 短時間勤務
- フレックスタイム
- 子の看護等休暇(時間単位での取得)
歯科医院では、「短時間勤務」「シフト調整」「時間単位の看護休暇」などが比較的取り入れやすい選択肢です。
歯科医院での対応策【実務編】
✅ 1. 就業規則と労使協定の見直し
制度導入には、就業規則や雇用契約書の修正が伴います。
必要な変更内容:
- 看護休暇の対象年齢の拡大
- 残業免除対象者の範囲変更
- 選択制措置の明記
- 意向確認の運用フロー
社会保険労務士と連携して、早めの見直しを行いましょう。
✅ 2. 時短・シフト柔軟化の運用を始める
例えば以下のような勤務形態を導入している医院も増えています。
- 「週3日×6時間勤務」
- 「午前のみ勤務で16時には退勤」
- 「月2回、子の送迎のために時差出勤」
こうした例をスタッフと共有することで、導入がスムーズになります。
✅ 3. 復職時の「個別意向確認」
育休復職時に、どの働き方を希望するかを面談で確認することが義務化されます。
形式的な面談ではなく、働き方に関する具体的な意向(希望の勤務時間・曜日・業務範囲など)を書面で残すことが推奨されています。
✅ 4. 制度の「見える化」で公平性を担保
制度を導入しても、スタッフが「自分に関係あるとは思わなかった」と思えば活用されません。
そのため、以下のような方法で制度の見える化を行いましょう。
- 院内掲示やLINEで制度内容を共有
- 新人スタッフ向けの制度説明
- 年1回の制度周知ミーティング
育児制度は“離職防止”と“採用強化”の両輪に
育児・介護と仕事の両立を支援する制度の整備は、スタッフの安心感につながるだけでなく、医院の採用力や定着率にも直結します。
特に現在、歯科衛生士や受付助手の採用は非常に厳しい状況です。「働きやすい職場」=「選ばれる職場」となってきています。
まとめ:小規模歯科医院こそ、法改正を“チャンス”に
2025年の育児・介護休業法改正は、単なる義務対応ではなく、医院運営をより持続可能にしていくための絶好のタイミングです。
- 育児中のスタッフが長く安心して働ける
- 院内の制度が整っていることで信頼される
- 将来的な採用活動にも良い影響がある
法律に対応するだけでなく、「制度を医院の強みに変える」視点で、早めの準備をおすすめします。