「説明している」と「伝わっている」は、まったく別の話です
歯科医院で「説明はしているのに、なぜか伝わらない」と感じたことはありませんか?
歯科医院を訪問していると、
「ここは先生の説明も丁寧なのに、なぜか誤解が生まれている」
と感じることがあります。
院長先生やスタッフの方からも、よくこんな声を聞きます。
「説明はちゃんとしています。」
この言葉が出る医院ほど、
説明しているつもりと、患者さんに伝わっている内容の間に、わずかなズレが起きていることが少なくありません。
患者さんは「分からない」とは言いません
患者さんは分からなくても、その場で口に出さないことが多いという事実です。私はトリートメントコーディネータ(TC)の経験もあり、患者さんへの説明について学び、試行錯誤を繰り返してきました。
患者さんは、先生の説明を受けたとき、どのように思っているのかをご存知でしょうか。
- 先生に対して聞き返しづらい
- 忙しそうで遠慮してしまう
- 「自分が理解できていないだけ」と思ってしまう
その結果、
「説明は受けた。でも正直、よく分からなかった」
という状態で帰られることがあります。
これは、誰かが悪いわけではありません。
立場と知識の差がある以上、自然に起こることです。
問題は、専門用語そのものではありません
歯科医療は専門性の高い分野です。
専門用語を使うこと自体が問題なのではありません。
ズレが生まれるのは、
その言葉が、患者さんの中で“意味に置き換わらないまま”話が進んでしまうことです。
ここでは、実際の現場でよく起きている
「先生の意図」と「患者さんの受け取り方」のズレを、具体例で見てみます。
現場で本当にズレやすい言葉と言い換え例
「様子を見ましょう」
先生の意図
今すぐ治療が必要な状態ではない。
患者さんの受け取り
放置していいの?悪くならない?様子ってどのくらい?
言い換え例
「今すぐ治療は必要ありません。
ただ、この状態が続くと変化する可能性があるので、
◯か月後に一度チェックしましょう。」
「定期的に通ってください」
先生の意図
予防やメンテナンスの重要性を伝えたい。
患者さんの受け取り
なぜ通う必要があるのか分からない。
言い換え例
「今の良い状態を保つには、
痛くなる前に確認することが一番の予防になります。
そのために定期的に来院していただき状態を確認した方がよいでしょう。」
「これは保険が使えません」
先生の意図
制度上の説明。
患者さんの受け取り
高い治療=不安、不信。
言い換え例
「この治療は保険の決まりで使えないのですが、
その分、見た目や耐久性を重視できる治療になります。
内容と費用について説明させていただいてもよろしいでしょうか。」
「問題ありません」
先生の意図
現時点では大きな問題はない。
患者さんの受け取り
何も気にしなくていい。
言い換え例
「今すぐ困る状態ではありません。
ただ、この部分は変化が出やすいので、
次回も一緒に確認していきましょう。」
情報は「多ければいい」とは限りません
誠実な医院ほど、
- リスクも
- 選択肢も
- 背景も
すべて伝えようとします。
ただ、患者さんは多くの場合、
緊張していて、情報を整理する余裕がありません。
大切なのは、
「全部伝えたか」ではなく
「今、何を一番理解してもらう必要があるか」です。
伝わっているかどうかを確認する姿勢が、安心につながる
説明のあとに、こんな一言を添えるだけでも違います。
- 「ここまでで、気になるところはありますか?」
- 「分かりづらいところ、ありませんでしたか?」
- 「少し難しい話でしたよね」
理解しているかを確認する姿勢そのものが、
患者さんに「聞いてもいい」という安心感を与えます。
患者満足度は、技術だけで決まらない
もちろん、治療技術はとても重要です。
ただ、患者さんの満足度を左右するのは、
- 分かりやすかったか
- 納得できたか
- 安心して任せられたか
こうした感情の部分でもあります。
「説明はしているのに、なぜか伝わらない」
そう感じたときは、
言葉を少しだけ患者さん側に寄せてみる。
それだけで、
医院の印象や信頼感は、大きく変わっていきます。
患者さんは、「何が一番困っているのか悩んでいるのかを、探って解決してあげる」ということを意識して話をすると伝わりやすいと思います。