毎年、4月入職が基本となる新卒採用。これは歯科業界においても例外ではなく、採用活動のスタートは1年以上前から始まるのが一般的です。
下の図をご覧いただくとわかるように、3月〜5月にかけて採用計画を立て、春から夏にかけて学校や求人サイトへの情報発信を行い、秋〜冬にかけて見学・面接・内定という流れが基本です。
とくに10月〜12月は内定のピーク。実際に「新卒歯科衛生士の7割が年内に就職先を決定している」という調査結果もあり、年明け以降の採用活動はすでに出遅れともいえる状況です。
新卒歯科衛生士 採用スケジュール
時期 | 採用活動の内容 |
---|---|
3月〜5月 | 採用方針の策定・人数計画の見直し |
6月〜8月 | 学校への求人票提出 就職情報サイトへ掲載 |
9月〜12月 | 施設見学の受け入れ 個別面談・面接 |
1月〜3月 | 内定通知・意思確認 内定者との継続的フォロー |
4月(翌年度) | 入職・新人研修開始 |
売り手市場の中でどう採用するか?
歯科衛生士の求人倍率はなんと19.4倍(2021年時点)。これはひとりの就職希望者に対して、約20件の求人があるという計算です。
この数字からも分かるように、採用市場は「完全な売り手市場」です。
このような中で新卒歯科衛生士を採用するには、「掲載すれば誰かが来る」という従来の考え方から脱却し、選ばれる医院になるための工夫と戦略が必要です。
主な採用ルートとその特徴
新卒採用でよく使われる手段は以下の通りです
- 学校への求人票送付(学内掲示)
- 歯科衛生士専門の求人サイト
- 人材紹介会社
- ハローワーク
- 医院のホームページ・SNS
なかでも「学校への求人票」と「求人サイト」が、新卒採用では主力とされています。
学校求人のメリット・デメリット
学校を通じた求人は、費用がかからず、ターゲット層が明確(歯科衛生士志望の学生)という点で非常に効率的です。
一方で、給与や休日などの基本的な待遇情報は得られても、職場の雰囲気や人間関係、教育体制といった“中身”が分からないという声も多くあります。
また、近隣医院が有利になりやすいため、Iターン・Uターン希望者や都市部への就職を希望する学生には不向きというデメリットもあります。
求人サイトの可能性
その点、求人サイトは全国の求人を一括して閲覧でき、情報発信の自由度も高いため、遠方への就職を希望する学生や積極的に情報収集したい学生には最適なツールです。
- 医療理念
- 教育体制
- 院長メッセージ
- 職場写真
といった情報が掲載でき、求職者が安心して応募しやすくなります。
差がつくポイントは「教育体制」と「人間関係」
新卒者にとって最も気になるのは「どのように成長できるか」「どんな人たちと働くのか」という点です。
特に歯科衛生士の場合、院内教育の充実度やフォロー体制が就職先選びの大きな決め手になります。
- 入社後にどのようなステップで学べるのか
- 院内勉強会の有無
- 院外セミナー費用の補助
- ロールモデルとなる先輩の存在
こうした項目を、求人情報の中に具体的に盛り込むことで「自分の未来がイメージできる医院」として魅力を高めることができます。
さらに「スタッフの人柄」や「職場の雰囲気」も大きな判断材料になります。
歯科衛生士会の勤務実態調査では、退職理由の第一位が“人間関係”というデータもあり、求職者の多くがこの点に敏感です。
小規模歯科医院こそ「環境整備」がカギ
特に小規模な歯科医院では、新卒採用が難しいと感じる先生もいらっしゃるかもしれません。
新卒者は「学びたい」「成長したい」という想いが強く、教育環境が整っていないと早期退職のリスクが高まります。
スキルアップできる環境や、親身に指導してくれる先輩がいること、見守り・サポート体制があることが重視されます。
また、福利厚生などの制度面も含めて、「この職場で安心して成長できる」と思える体制づくりが先決です。
まとめ:採用の“準備”は1年前から
新卒歯科衛生士を採用するには、遅くとも春から動き出す必要があります。
そして、選ばれるためには「情報発信の工夫」「教育環境の整備」「職場の魅力の見える化」が不可欠です。
求人は「出すだけ」の時代ではありません。
“選ばれる求人”を目指し、準備と体制づくりを進めていきましょう。