歯科医院の求人代行を行っていると、応募者の方のさまざまな背景に触れる機会があります。歯科衛生士の求人は特に難しく、なかなか応募がないことも多いので、一件でも応募があると嬉しいものです。しかし、その応募者が本当に長く働いてくれるのか、職場に馴染めるのかという点は、慎重に見極める必要があります。

ある応募者とのやり取り

先日、38歳の歯科衛生士の方から正社員希望の応募がありました。一見すると、経験豊富な方。しかし、履歴書を拝見すると、過去7件の転職歴があり、最長で2年半~3年、短いと半年で退職されていました。すべての退職理由は「契約期間満了」。

歯科医院での長期勤務が難しい事情があったのかもしれません。とはいえ、職場の雰囲気を大切にしている医院にとって、短期間での退職を繰り返す方を採用するリスクは無視できません。

そこで、面接を設定する前に、事前に以下の質問を投げかけました。


「履歴書を拝見したところ、契約期間満了での退職が続いているようですが、以下について差し支えない範囲でお聞かせいただけますでしょうか。」

  • 有期雇用での勤務となった理由
  • 契約期間満了に至った経緯

すると、応募者の方からの返答は

「その件は直接お会いした時にお話ししようと思いましたが、直接お話し出来ないのであれば、大変申し訳ないのですが辞退させていただきたいと思います。」

というものでした。

結果として、院長先生と相談し、今回は面接を見送る判断となりました。

なぜ「質問」が重要なのか

昨今、「院長のパワハラで心が折れた」という理由で転職される方も多いです。しかし、そのような理由で転職した方を採用した際に長く定着していたかというと、そうでもないケースがほとんどでした。

つまり、職場側の問題だけではなく、応募者本人にも何かしらの課題がある可能性が高いのです。

また、面接では応募者が事前に準備をしてくるため、表面的な対応だけでは見抜くことは難しくなります。そこで有効なのが、「よくある質問ではなく、意外な質問をすること」です。

応募者の背景を見抜く「質問」

例えば、家族構成を直接聞くのは昨今の採用基準では難しくなっています。しかし、ある質問をすることで、自然と家族構成が明らかになることがあります。

「休日はどのように過ごされることが多いですか?」

この質問の回答次第で、その方が家族と過ごす時間が多いのか、一人で過ごすことが多いのか、趣味を楽しんでいるのかが見えてきます。

また、

「前職で一番楽しかったことは何ですか?」

と尋ねると、応募者が仕事に対してどのような価値観を持っているのかが分かります。

こうした質問を通じて、応募者の本質や職場との相性をより深く知ることができます。

直線的な質問はアウトですが、まだ他にも相手を探る質問があるんです。その質問、気になりませんか。

採用は慎重に、でも柔軟に

採用の難しさは、「人柄」や「価値観」といった書類では見えない部分が非常に重要であることです。

しかし、すべての応募者を疑ってかかるのではなく、適切な質問を通じて相手の本音を引き出すことで、より良いマッチングが可能になります。

「なぜ転職を繰り返しているのか?」 「なぜ前職を辞めることになったのか?」

表面的な理由ではなく、背景を知ることで、医院と応募者の双方にとってより良い採用を実現できるのではないでしょうか。