トラブル防止と円滑な医院運営のために
小規模歯科医院で就業規則を整備するべきか迷っている院長先生は多いのではないでしょうか。
「従業員が10名未満だから不要」と思われがちですが、実は小規模歯科医院こそ就業規則が大きな力を発揮する場面が多くあります。本記事では、小規模歯科医院が就業規則を作成するメリットや、最低限整えるべきポイントをわかりやすく解説します。
「うちは従業員が10人以下だから就業規則なんて作っていないよ」
「雇用契約書だけあれば十分でしょう?」
そうお考えの院長先生は少なくありません。
しかし結論から申し上げると、従業員数10名未満の歯科医院でも就業規則を整備するメリットは非常に大きいのです。
今回は、なぜ小規模歯科医院でも就業規則をつくるべきなのか、そしてどのようなポイントを押さえるべきかをわかりやすく解説します。
10名未満は「作成の義務なし」だが、作っておくメリットは大きい
労働基準法では、常時10名以上の従業員がいる場合に就業規則の届出義務が発生します。一方で、10名未満の医院では提出義務はありません。
しかし義務がなくても、就業規則があることで得られるメリットは以下のとおりです。
- 院内での労務トラブルを未然に防げる
- スタッフのモチベーションアップにつながる
- 採用時の説明がスムーズになる
- 「医院としてのルール」が明確になり管理が楽になる
- いざというときの医院の法的リスクが軽減される
特に小規模医院では、院長とスタッフの関係が密な分、認識のズレがトラブルの原因になりがちです。
雇用契約書だけでは不十分な理由
「雇用契約書があるから十分では?」と思われがちですが、実は雇用契約書には限界があります。
雇用契約書で記載できる内容は、
- 労働時間
- 給与
- 休日
といった基本的な労働条件が中心です。
しかし実際には、以下のような細かなルールまで契約書に書ききれません。
- 懲戒処分の基準
- 医院独自の休暇(慶弔、夏季、年末年始など)
- サービス残業防止のための取り決め
- 個人情報保護やSNSルール
- 職場での禁止行為
こうした内容を整理し明文化しておくことで、
「言った・言わない」問題を防ぎ、院長とスタッフの双方を守ることができるのです。
就業規則があることで得られる医院側のメリット
● 認識のズレによるトラブルを防げる
多くの労務トラブルは、院長とスタッフの「働き方に対する認識の違い」が原因です。
例)
- 「最初に言われなかったのに後から注意された」
- 「どこまで院内での会話が許されるかわからない」
- 「休暇のルールを知らなかった」
就業規則があるだけで、こうした齟齬は大幅に減ります。
● 採用活動がスムーズに
求人票を作成するとき、多くの医院で不明点が浮上します。
- 有給休暇の付与方法
- 夏季休暇・年末年始休暇
- 慶弔休暇の有無
- パートへの適用範囲
就業規則があれば、迷わず明確に提示できます。
● いざというときに「院長を守る」
労働法は基本的に“労働者保護”がベースです。
だからこそ、医院独自の就業規則と雇用契約書が、トラブルの際に院長を守る重要な武器となります。
小規模医院でも作っておきたい「簡易就業規則」のポイント
最低限、次の内容は就業規則として整備しておくことをおすすめします。
① 労働時間・休暇
- 始業・終業時刻
- 休憩、休日
- シフトの作成・変更方法
- 年次有給休暇の取り扱い
- 産前産後・育児休業
- 医院独自の休暇(慶弔、夏季、年末年始)
② 賃金
- 賃金の決定方法・支払方法
- 時間外労働の割増率
- 昇給・賞与の有無
③ 服務規律・守秘義務
- 患者対応の基本ルール
- 謝礼の取り扱い
- カルテ・個人情報の扱い
- SNSや院外情報の扱い
④ 退職・解雇
- 自己都合退職の申し出ルール
- 解雇事由の明確化
⑤ 適用範囲・周知方法
- 正社員・パートへの適用範囲
- 院内掲示・配布・データでの周知義務
まとめ
従業員10名未満だからこそ、就業規則の整備が医院を守ります。
採用時のトラブル防止、スタッフのモチベーション向上、労働環境の安定化に直結します。