就活イベントの裏側と、地方歯科医院の挑戦

※本記事は、以前歯科医院で採用活動に携わっていた私が、当時の経験を振り返りながら綴ったものです。業界や特定の取り組みを否定する意図はなく、あくまで現場の一例としてご覧いただければ幸いです。

以前、私は歯科医院の採用活動に関わっていました。合同説明会や職場見学を通じて、求職者との出会い、数ある歯科医院の中から選んで応募してくれたことが何よりの喜びでした。

しかしここ数年、そうした“出会い”のかたちが変わってきたと感じています。

プレゼント競争と、本来の目的のズレ

就職イベントの現場では今、ギフト券や高級菓子、医院に見学に来てくれる方への交通費支給など、いわゆる「ギフト競争」が激化しています。
現場にいた当時も、「見学に行けば、求人会社から○○がもらえるらしい」と話す求職者の声を耳にしたことがありました。

もちろん、こうした工夫には意味があります。移動や就活の負担を減らし、少しでも医院を知ってもらおうとする想いには、私自身も共感していました。

ただ、正直、疑問に思うこともありました。

「これは医院を知ってもらうための見学なのか、それともギフトを受け取るためのイベントなのか」

本来、職場見学とは“体験”であり、“対話”の場だったはずです。

本当の魅力は、体験から生まれる

実際に見学に来た方のなかには、ギフトがきっかけだったとしても
「実際に現場を見たら印象が変わった」
「ここで働く自分を想像できた」
と話してくれる方もいらっしゃいました。

だからこそ、医院の魅力を演出ではなく“等身大”で伝えることが大切なのだと思います。

  • スタッフ同士の何気ない会話
  • 診療風景の空気感
  • 忙しさのなかににじむ温度やリズム

そうした「リアル」にこそ、人は惹かれるのではないでしょうか。

地域格差という現実

私が勤務していたのは千葉県の郊外にある医院でした。
都内で開催される就活イベントに足を運ぶ求職者の多くは、都内や埼玉エリアを希望していて、
千葉の郊外というだけで応募のハードルが上がる現実がありました。

正直に言えば、どれだけ医院の取り組みや雰囲気に自信があっても、「場所」の段階で選ばれないことも多かったのです。

それでも、来たくなる理由をつくる

  • 家賃補助や引っ越し手当などの福利厚生で生活面を支える
  • 教育体制やチーム文化を丁寧に紹介し、安心して働ける環境を伝える
  • 求職者との“ひとつの出会い”を大切にする姿勢を言葉と行動で示す

そして何より、「たくさんの応募」数を求めるのではなく、
“響き合える誰か”とのご縁を、大切にしていくという気持ちです。

応募数ではなく、歯科医院が求める人材との出会い

ギフトや待遇だけでは語りきれない、“人と場所との相性”。
イベントが“見せる場所”で終わらず、
見学が“もらうための場”にならず、
本当に「ここで働いてみたい」と思える場所に出会えるように。

それぞれの歯科医院が求める求職者と“つながる”採用の形を、
これからも、経験者として顧問先の歯科医院のお力になれるよう尽力していきます。