― 大阪高裁が歯科医院への虚偽口コミに賠償命令を出した理由 ―

歯科医院のGoogle口コミ賠償が現実のものとなりました。
2025年7月、大阪高裁は、歯科医院のGoogle口コミ欄に虚偽の内容を投稿した女性に対し、約74万円の損害賠償を命じました。

「口コミは個人の感想だから仕方ない」
そう考えていた歯科医院にとって、この判決は無視できない内容です。

しかし、Google口コミに書かれた“一文”が、裁判で違法と判断され、賠償命令が出る時代になっています。

本記事では、この判決から
歯科医院が知っておくべき「口コミリスクの境界線」を整理します。


事件の概要|問題となった口コミ内容とは

問題となったのは、Google口コミに投稿された次のような内容です。

「審美や矯正、インプラント、セラミック、口腔外科(抜糸以外)の知識は20年以上前のもの。
急ぎで虫歯治療をするには良いが、継続的なケアは難しいと感じる」

一見すると
「個人の感想」「主観的な評価」
にも見えます。

しかし裁判所は、この表現を“単なる感想”とは認めませんでした。


裁判所の判断ポイント①

「知識が20年以上前」という表現は“事実評価”になる

大阪地裁・大阪高裁が共通して問題視したのは、

  • 「20年以上前の知識」
  • 「継続的ケアができない歯科」

という表現が、
歯科医師としての専門性・能力を事実として否定する評価になっている点です。

しかも、

  • 具体的な根拠が示されていない
  • 実際の治療内容と結びついた説明がない

ことから、
「医学的知見を更新していない歯科医師」という虚偽の事実を示す投稿と判断されました。


裁判所の判断ポイント②

投稿動機が「不満」だった点も重く評価

高裁判決では、さらに踏み込んで、

  • 投稿者は「ボトックス治療」を希望
  • 医師が消極的な対応を示した
  • その不満から、体験した事実を超えて誇張した投稿をした

と認定しています。

つまり、
医療内容への合理的批判ではなく、感情的な不満のはけ口として書かれた口コミ
と判断されたわけです。


それでも賠償額が「74万円」にとどまった理由

一方で高裁は、次のような現実的な判断も示しました。

  • Google口コミは誰でも投稿できる
  • 肯定的・否定的な評価が混在する
  • 「必ずしも信用できる情報ではない」ことは社会的に周知

このため、
歯科医院への悪影響は「限定的」とされ、
実際にかかった訴訟費用の「約半額」が損害として認定されています。

👉 つまり
「違法ではあるが、万能な信用情報ではない」
というのが裁判所のスタンスです。


歯科医院がこの判決から学ぶべきこと

この判決は、先生方にとって
「口コミ対策は放置してよい問題ではない」
という強いメッセージです。

①「感想だからOK」は通用しない

  • 医師の能力・知識を断定的に否定
  • 専門性を事実として貶める表現
    名誉毀損・信用毀損になる可能性

② 対応を誤ると“泣き寝入り”にも“過剰対応”にもなる

  • 放置すれば医院ブランドを傷つける
  • 感情的に反論すれば炎上リスク

③ 「備えている医院」ほど冷静に対処できる

  • 投稿内容の法的ラインを理解
  • スクリーンショット・記録の保存
  • 削除依頼・開示請求の判断基準を知る

口コミは「集患ツール」であると同時に「経営リスク」

Google口コミは、
患者さんにとっては“参考情報”、
医院にとっては“評価資産”です。

しかし一方で、

  • 事実に基づかない投稿
  • 感情的な誇張
  • 医療内容への誤解

が、医院の信用を大きく損なうこともある

今回の判決は、
「歯科医院が法的に守られるラインはどこか」
を示した、非常に実務的な事例だと感じました。