人材不足時代に注目される歯科医院経営の新しい選択肢
はじめに
近年、「ワンオペ歯科医師」という言葉を耳にする機会が増えています。
ワンオペ歯科とは、歯科医師が一人で診療・受付・会計・予約管理・滅菌などを行う運営スタイルを指します。
実際に訪問先の歯科医院の中にも、ワンオペで診療を行っている先生が複数いらっしゃいます。
では、「ワンオペ歯科医師は本当に増えているのでしょうか?」
本コラムでは、WEB上の情報や専門家の見解、そして現場の声をもとに、その実態を整理します。
ワンオペ診療の現場で見た実際の運営スタイル
ワンオペで診療を行う先生は、診療・治療だけでなく、
- 器具の滅菌・消毒
- 会計業務
- 次回予約の調整
- 電話対応
- 業者対応
- レセプト業務
といった業務をすべて先生一人で行っています。
特に印象的だったのが、診療中の電話対応の考え方です。
治療中に電話が鳴っても、無理に対応せず、診療を最優先。
診療の合間に着信履歴を確認し、必要なものだけ折り返すというスタンスを取っていました。
患者さんの安全と治療の質を守るための、ワンオペならではの判断と工夫だと感じました。
なぜ今「ワンオペ開業」が注目されているのか
① 深刻な人材不足
歯科業界では、歯科衛生士や歯科助手の採用難が長年の課題となっています。
専門家の解説では、地域によっては求人倍率が非常に高く、「採用したくても人がいない」状況が常態化していると指摘されています。
② 人件費・採用コストの増加
求人広告費や人材紹介料、教育にかかる時間とコスト。
これらの負担が年々重くなり、経営的なリスクとして人材雇用を捉える院長も増えています。
③ 省人化・DXの進展
予約システム、電子カルテ、自動精算機などの導入により、
少人数、あるいは一人でも医院運営が成り立つ環境が整いつつあります。
こうした背景から、「スタッフを抱えない開業スタイル」が
一つの選択肢として語られるようになっています。
「ワンオペ歯科医師は増えている」は事実なのか?
結論から言うと、
「ワンオペ歯科医師が増えている」と統計的に断定できる公的データは、現時点では確認されていません。
厚生労働省や日本歯科医師会の統計では、
「ワンオペ」という運営形態そのものを分類したデータは存在せず、
人数の増減を示す明確な数値も出ていないのが実情です。
一方で、
「ワンオペ開業という考え方が注目されている」
「選択肢として検討する歯科医師が増えている」
という点については、複数の専門家コラムや業界記事から読み取ることができます。
ワンオペを選ぶ理由 ― 現場のリアルな声
実際にワンオペ診療を行う先生方からは、
経営面だけでなく精神的な負担の軽減を理由に挙げる声も聞かれました。
たとえば、
- 必要以上に人間関係へ気を配らなくてよい
- マネジメントに神経を使いすぎなくて済む
といった点を、メリットとして感じている先生もいます。
また近年は、指導やコミュニケーションの在り方に慎重さが求められる時代です。
その中で、
- 「意図せず誤解を招かないか心配になる」
- 「人を雇うこと自体が、心理的な負担になっている」
と感じ、ワンオペという形に落ち着いたケースもありました。
採用活動そのものへのストレスを挙げる声もあります。
ようやく採用しても短期間で退職してしまい、そのたびに募集・教育・引き継ぎに時間を取られる
そうした経験を重ねた結果、
「この流れが続くなら、一人でやった方が気持ちが楽だった」
と感じた先生もいらっしゃいました。
「無理をしない診療」を選ぶという考え方
さらに、年齢や今後の働き方を見据え、
“長く続けるための診療スタイル”としてワンオペを選ぶ先生もいます。
- 若い頃と同じペースでは続けられない
- 売上や拡大よりも、自分の体力を優先したい
- 患者さんを自分のペースで診たい
こうした考えのもと、
診療人数を抑え、完全予約制で、無理のない運営を行うスタイルです。
一般的には「ワンオペは大変そう」という印象を持たれがちですが、
先生ご本人にとっては、
「精神的には、むしろ楽になった」
という声もありました。
まとめ
- ワンオペ歯科医師が増えていると断定できる統計データはない
- しかし、人材不足・採用難・人件費高騰を背景に、ワンオペ開業が注目されているのは事実
- ワンオペは「楽をする」ためではなく、
無理をせず、自分に合った診療スタイルを選ぶ一つの形とも言える
拡大や多人数経営だけが正解ではない時代。
これからの歯科医院経営において、
「どんな規模で、どんなペースで、誰と働くのか」を改めて考えることが、
より重要になっていくのではないでしょうか。