フルタイム・パートの違いと実務ポイント

働き方改革が進み、歯科医院でも“有給休暇の管理”が必須の時代になりました。
「うちは個人医院だから関係ない」と思っていると、知らないうちに労基署の指導対象になることもあります。

本コラムでは、フルタイム・パートの有給休暇の違い、5日取得義務のポイント、未消化分の扱いなど、歯科医院が押さえるべき基礎知識を整理します。


1.フルタイムスタッフの有給休暇|付与日数の基本

フルタイムの従業員には、労働基準法39条により、次の通り有給休暇が付与されます。

  • 入社6か月後:10日付与
  • 以後、勤続年数に応じて付与日数は増加

医院の就業規則がどうであっても、労働基準法を下回る付与日数は無効です。


2.パートタイム労働者にも有給休暇はある

「パートには有給がない」と誤解されがちですが、
パートにも勤務日数に応じて有給休暇が付与されます。

付与日数は「週所定労働日数(または年間労働日数)×勤続年数」で決まる“比例付与”です。


3.パートへの比例付与の具体例(厚生労働省)

週所定労働日数が4日以下、かつ週30時間未満のパートの法定付与日数


  • 週4日勤務・勤続3年半のパート → 10日付与
  • 週3日勤務・勤続2.5年のパート → 6日付与
  • 週1日勤務・勤続1.5年のパート → 2日付与

ポイントは、
「週1日勤務でも必ず有給が発生する」 という点です。


4.“年5日取得義務”の対象は誰?

働き方改革関連法(労基法39条7項)により、
次の条件を満たすスタッフに対し、医院は 5日以上の有給休暇を取得させる義務 があります。

✔ 年10日以上の有給休暇が付与されている労働者

つまり、パートでも付与日数が10日以上になれば、歯科医院は 「確実に5日休ませる」 必要があります。

※対照表

スタッフ年間付与日数年5日取得義務
フルタイム10日以上対象
週4日勤務パート(勤続3.5年以上)10日対象
週3日勤務パート(勤続2.5年まで)6日対象外

5.未消化の有給休暇|繰越は1年、時効は2年

付与された有給休暇は、翌年度まで繰り越し可能
ただし、労基法115条により 2年で時効消滅 します。


6.よくある歯科医院の“危険ポイント”

次に当てはまる場合、指導・是正勧告の対象になる可能性があります。

  • 有給休暇の付与日数が法定より少ない
  • パートに有給休暇を付与していない
  • フルタイムでも年10日未満しか付与していない
  • 年5日の強制取得を行っていない

医院独自の規定より、法律が優先される点に注意が必要です。


7.まとめ|有給休暇は“医院の都合で減らすことはできない”

有給休暇は、すべての労働者に法律で保障された権利です。

歯科医院が押さえるべきポイントは次の3つ。

✔ パートにも勤務日数に応じて必ず有給が発生する

✔ 年10日以上付与されるスタッフには「5日の取得義務」がある

✔ 未消化分は翌年に繰り越され、2年で時効消滅する

医院の規模に関わらず、適切な労務管理をしていない歯科医院には指導が入る時代です。

先生の医院では、スタッフの有給管理はきちんとできていますでしょうか?
今一度、医院の有給休暇規定や運用状況を見直してみてはいかがでしょうか。

厚生労働省:年次有給休暇の付与日数より転載