——院長先生が知るべき最新トレンド

「副業は一部の人だけのもの」
そう考えていた時代は、もう過去のものになりつつあります。

大手求人サイトが行った歯科衛生士100名への調査(2025年)では、
“副業をしている” “過去にしていた” と答えた人が33% にのぼりました。
これは、労働政策研究・研修機構の全国調査(副業者6%)と比べて、
歯科衛生士は一般の5倍以上、副業に積極的 ということになります。

では、なぜ歯科衛生士の間で副業・スポットワークが広がっているのでしょうか。
そして、院長先生はこの流れをどう受け止めれば良いのでしょうか。

医院運営の視点からポイントを整理しました。


■ なぜ“3人に1人”が副業するのか

アンケートでは、副業をしている歯科衛生士から次の理由が挙がりました。

◎ 1. 収入を増やしたい

  • 生活費や将来への不安
  • 「手取りが思ったより少ない」
  • 物価高で以前より厳しくなった
  • 頑張っても評価されていないと感じる
  • 国家資格なのに給与の額が少ない
  • 他職種のSNSでキラキラ動画を見て心がモヤっとする
  • 患者さんに感謝されても評価にはつながらない

収入アップは最も大きな理由です。労力と収入のズレに気づいた結果として自然に出てくる選択肢のようです。

◎ 2. 他の世界も見てみたい、他の医院で経験を積みたい

  • 「今の医院では学べない技術を身につけたい」
  • 「違う先生の治療を見たい」
  • 転職ではなく“副業でスキル補完”という考え方

◎ 3. ゆとりある勤務体制(週休2.5〜3日制)の広がり

空いた時間を“別の働き方”で活用する傾向もあります。スポットで勤務できる紹介会社に登録している歯科衛生士も多く、依頼のあった歯科医院で短時間で働くというスタイルもあります。実際にある顧問先の歯科衛生士さんも3人中2人は登録しています。

◎ 4. 歯科衛生士以外の異職種での副業

ヨガ、スポーツ指導、飲食店、ライター、動画編集、イベント運営など
本業と異なる仕事に挑戦するケースも増えています。

私の知り合いにも副業をしている歯科衛生士がいます。診療後に週に3日ウーバーで配達をしていたり、ネット上で自作のイラストを販売、スイミングスクールの指導員をしていたりと、彼女たちのパワーに驚かされます。


■ 副業に興味はあるけど、できない理由

副業経験がない歯科衛生士にもアンケートを行うと、以下の理由が挙がりました。

  • “副業禁止”の就業規則
  • 思うように時間が取れない
  • 本業の勤務時間が長い
  • 家庭との両立が難しい
  • 「やってみたいけど一歩踏み出せない」
  • 本業だけで疲れ果ててしまう

興味はあるけど動けないという理由から副業をしていない衛生士さんもいます。


■ 院長先生が押さえておきたい4つのポイント

副業の広がりは、医院経営に確実に影響を与え始めています。
ここでは、現場で感じる“リアルな視点”を整理しました。


① 「副業=辞めたい」ではない

副業を希望するスタッフの多くは、
給与UP・スキルUP を求めているだけで、
離職意向とは必ずしも一致しません。

むしろ学習意欲が高い、前向きなタイプの方が多いように感じます。


② 黙って副業をされる最大の理由は「ルールが不明確」

「就業規則に書いていない」
「相談しづらい雰囲気」
この状態が、
“隠れて副業する” → 労務リスク増大
につながります。

トラブルを避けるためには、医院として

  • 副業OK/NGの基準
  • 申請フロー
  • 本業への影響の考え方
    を整理することが必要です。

③ 副業容認は“医院のブランド”にも関わる

副業を認める場合、以下のリスク管理が必須になります。

  • 情報漏えい
  • 患者対応への影響
  • 労働時間のダブルカウント
  • 疲労によるパフォーマンス低下

ルール整備により、医院の品質を守ることができます。


④ スキルアップの機会をつくると、副業ニーズは自然に減る

アンケートでは、一部スタッフが、他の歯科医院でも勤務している背景として
「もっと学びたい」「他の治療も見たい」
という声が目立ちました。

院内で学べる環境があれば、
副業に頼らずともスキルアップを感じられ、定着にもつながるようにも思えます。


副業・兼業に関する明確なルールを整備する

医院内で混乱を避けるためには、就業規則に副業・兼業に関する明確なルールを整備し、スタッフに丁寧に説明することが必要だと思います

  1. 競業避止義務の明確化
     同業他院での勤務や患者の引き抜き行為は厳禁とする。
  2. 労働時間管理の徹底
     他の勤務先を含めた通算労働時間を把握し、過重労働にならないよう注意する。
  3. 本業への影響防止
     疲労や勤務態度への悪影響がある場合は制限をかける旨を規定する。
  4. 副業届出制の導入
     副業・兼業を希望する場合は必ず事前に申請し、クリニック側が内容を確認できる仕組みをつくる。
  5. 情報漏洩防止条項の明記
     患者情報や診療方針、経営上のノウハウを外部に持ち出すことを禁止し、違反時の処分を明確にする。

まとめ

副業・兼業の扱いは、国の方針としては「認める方向」ですが、医療・歯科の現場においては競業リスク、労働時間の超過、患者対応の質低下など特有の問題が存在します。

歯科医院ごとの体制や業務内容、スタッフ一人ひとりの役割や負担を見極めたうえで、ルールを慎重に考える必要があると思います。