歯科医院での正しい労務管理とは?
スタッフの残業時間の管理や、労務トラブル防止に頭を悩ませている院長先生方へ。
日本の労働基準法に定められた「36協定(サブロク協定)」について、歯科医院ならではの注意点や実務上の流れをわかりやすくまとめました。
安心してスタッフを守りながら、医院経営を安定させるための基本知識としてぜひご活用していただけたらと思います。
1. 36協定とは? 歯科医院に必要な理由
「36協定」とは、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間(原則、1日8時間・週40時間)を超えて残業や休日出勤を行う場合に必要な労使協定です。
この協定を結び、所轄の労働基準監督署へ届出をしなければ、従業員に残業をさせることは法的に認められません。
2. 歯科医院ならではの特例:週44時間ルール
従業員が常時10人未満の歯科医院(保健衛生業)では、週の法定労働時間が「週44時間」に緩和される特例があります。
ただし、1日の労働時間は8時間までという原則は変わりません。
この特例を利用する場合は、就業規則や労働契約書への明記が必要です。
3. 36協定と届出の手順・注意点
- 協定書(労使間の契約書)
スタッフの過半数代表と協議し、署名・押印して作成、院内で保存します。
社労士を顧問に入れている医院であれば、多くの場合、社労士から「そろそろ36協定の更新時期です」と書類提出を促されるため、手続きはスムーズです。
従業員代表は特別な役職者や選挙で決める必要はなく、スタッフの中から過半数を代表できる人が署名・捺印すれば問題ありません。 - 36協定届(労基署への提出書)
協定を届け出て初めて法的効力を持ちます。届出がないと違法状態となります。 - 上限規制
原則「月45時間・年360時間」が上限です。
特別条項付きでも、月45時間超は年間6回まで、年720時間・月100時間未満・複数月平均80時間以内などの制限があります。 - 見直しのタイミング
36協定の有効期間は1年が限度で、毎年更新が必要です。
4. 労働時間把握と記録の重要性
使用者には労働時間を正確に把握・記録する義務があります。
タイムカードやICカード、PCログなどの客観的な記録を活用し、5年間保存することが求められています。
5. 院長先生が気をつけたいポイント
- 労働者代表の選出方法に不備があると協定自体が無効になるリスクがあります。
- 残業代の未払いはスタッフとの信頼関係を壊し、労務トラブルに直結します。
- 労務管理の不備は「ブラック医院」というレッテルにつながり、採用や定着に悪影響を及ぼします。
まとめ表
テーマ | 歯科医院でのポイント |
---|---|
法定 vs 所定労働時間 | 1日8時間・週40時間(特例で週44時間) |
36協定の必要性 | 協定と届出が必要、違反は罰則対象 |
上限規制 | 月45時間・年360時間(特別条項あり) |
記録と保存 | タイムカード等の客観記録を5年保存 |
実務の流れ | 社労士が促し、従業員代表が署名捺印 |
最後に
36協定は、単なる事務手続きではなく、スタッフを守り、医院経営を守るための労務の基本です。
社労士を活用しながら正しく手続きを行い、スタッフに安心して働いてもらえる環境を整えられたらいいと思います。