採用活動を進めるうえで、魅力的な求人広告は欠かせません。しかし、内容に誤りや不適切な表現が含まれていると、思わぬトラブルや信用低下を招くことも。最悪の場合は法令違反とみなされ、罰則の対象になることもあります。
「良い人材に来てほしい」「医院の雰囲気に合う人が欲しい」――その気持ちは当然ですが、求人広告には守るべきルールがあります。今回は、歯科医院が求人広告を作成する際に注意すべき法律やNG表現について、わかりやすくまとめました。
求人広告に関わる5つの法律
求人情報を作成する際には、以下の法律が深く関わっています。
- 労働基準法
労働条件の最低基準を定めた法律。すべての雇用に適用されます。 - 男女雇用機会均等法
性別による差別的取り扱いを禁止する法律です。 - 最低賃金法
地域ごとの最低賃金額を下回らない賃金設定が義務付けられています。 - 雇用対策法
年齢制限などの不当な条件設定を禁止する法律です。 - 職業安定法
求人広告に必ず記載すべき情報(労働条件、勤務時間、保険の有無など)を定めています。
これらに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。また、是正指導を無視すれば、医院名の公表といった社会的な制裁も免れません。
よくある“NG表現”と正しい書き方
【1】差別・優遇を含む表現
悪意がなくても、特定の属性を排除したり優遇するような表現はNGです。
NG例:
・「◯◯県在住の方」 → 出身地や居住地の特定は避ける
・「明るくて社交的な人」 →「患者さんと丁寧に接することができる方」
【2】性別による制限
特に歯科衛生士に多い誤解。「女性限定」は明確な違反です。
NG例:
・「女性スタッフ活躍中」 →「歯科衛生士活躍中」
・「主婦歓迎」 →「主夫・主婦歓迎」「家庭と両立したい方歓迎」
【3】年齢による制限
「30歳まで」など年齢を限定する表現は、原則禁止です。
NG例:
・「新卒歓迎」 →「未経験者歓迎」「ブランクのある方も丁寧に指導」
・「40歳以上は不可」 →「年齢不問」「経験・スキルを重視」
【4】実態と異なる条件提示
給与や勤務時間など、事実と異なる記載は重大な違反になります。
NG例:
・「月給30万円~」→ 実際に支払われる下限金額を正確に記載
・「完全週休2日制」→ 祝日や休診日と合わせた週休数に注意
■ 歯科医院だからこそ、求人内容に「誠実さ」を
歯科医院の採用は、業務の習熟や人間関係の構築に時間がかかるからこそ、定着してくれる人材との出会いが大切です。
その第一歩である求人広告に、不適切な表現や誤解を生む内容が含まれていると、求職者との信頼関係が崩れかねません。
歯科衛生士や助手の方たちは、求人情報を細かくチェックし、他の医院と比較しています。だからこそ、法令に沿った正確な表現と、医院の魅力が誠実に伝わる言葉選びが求められます。
■ トラブル防止のために「事前チェック」を
✔ 労働条件に誤りがないか
✔ 差別・制限表現が含まれていないか
✔ 実際の勤務実態と相違がないか
求人広告を作成する際には、必ず複数人でチェックすることをおすすめします。
もし不安な点がある場合は、専門の業者や外部アドバイザーに確認してもらうのも有効です。