~患者さんが納得して自費治療を選ぶために必要なこと~
自費診療の割合を上げたいと考えたとき、よく聞く施策が「自費カウンセリングを強化しましょう」「TC(トリートメントコーディネーター)を育てましょう」というものです。たしかに正論です。
しかし、現実にはお金も時間もかかりますし、そもそもTCに適任なスタッフが院内にいないという医院も多いのではないでしょうか。
院長先生自身が丁寧に説明しているつもりでも、患者さんによっては「高額な治療ばかり勧められた」と不信感を抱いてしまうこともあります。
このギャップをどう埋めるかが、自費率アップのカギになります。
私がTCを担当していたときの経験から
私はかつて、トリートメントコーディネーターとして勤務していた経験があります。
TCの講習も受け、心理学やカウンセリングの技術を学びながら、患者さんに寄り添い、納得のうえで自費治療を選んでいただくサポートをしてきました。
カウンセリングルームで患者さんのお話をじっくり聞いていると、多くの方がすでにネットで調べたり、友人・家族に相談したりして、自分なりの「答え」を持って来院していることがわかりました。
その「答え」と歯科医師の判断が食い違ったとき、患者さんの不信感が大きくなってしまうのです。
たとえば、
「先生にインプラントって言われたけど、そんな急に言われても…」
「先生に抜歯って言われたけど、抜きたくないんです…」
といった本音を、歯科医師には言えず、私には打ち明けてくださるケースがとても多かったのです。
歯科医師が金銭目的で治療を勧めているわけではないと分かっていても、患者さんにはそう映ってしまうことがあります。これはもう「思い込み」によるすれ違いです。
だからこそ、第三者として間に入るスタッフがいることで、不信感をやわらげ、正しく理解してもらえる可能性が格段に上がります。
第三者としての役割は、TCだけではない
では、その「第三者」は誰が担えばいいのでしょうか?
必ずしも、専任のトリートメントコーディネーターが必要というわけではありません。
私は、歯科助手や受付スタッフでも十分にその役割を担えると考えています。
なぜなら、患者さんは治療に不満があった場合、受付でクレームを言って帰ることが多いですし、
「今日何をやったの?」「治療はあとどれくらいかかるの?」と、診療後に受付スタッフに確認することもよくあります。
つまり、誰に聞くかによって、話しやすさ・聞きやすさが違うのです。
だからこそ、受付や助手スタッフが、TCのような立場で患者さんの不安や疑問を受け止める役割を担うことは大きな意味があります。
もちろん、そのためには一定の教育や情報共有体制が必要です。
ですが、患者さんと医院の信頼関係を築き、自費治療をスムーズに進めるために非常に有効な取り組みだと思います。
患者さんが“納得して自費治療を選ぶ”ための体制づくり
患者さんに自費治療を勧める上で重要なポイントは以下の3つです。
1. 難しい医療用語を“患者さんの言葉”に翻訳する
歯科医師が専門的に説明したことを、患者さんが理解できる形に「翻訳」することが必要です。
2. 医療法をふまえた伝え方(広告規制への配慮)
インターネットや院内掲示を通じて情報提供を行う際には、医療広告ガイドラインに準拠する必要があります。
3. SEO対策を含めた情報発信の工夫
「自費治療に前向きな患者さん」に届く情報発信をするには、SEO対策やキーワード設計も重要です。
これらに加えて、院内でのカウンセリング体制が整っていれば、自費診療を選ぶ患者さんとの信頼構築はよりスムーズになります。
歯科医師との情報共有がカギ
最後にもう一つ大事なのが、歯科医師との綿密な情報共有です。
- 患者さんの主訴(困っていること)
- 現在の状態
- 治療の方向性と選択肢
- 治療を通して何が改善されるのか
これらをスタッフも把握したうえで、患者さんにわかりやすく説明することが重要です。
さらに、患者さんの不安や希望を丁寧に聴き出す力も求められます。
私はそのスキルを高めるためにコーチングを学び、日々のカウンセリングに取り入れました。
結果として、月に800万円の自費契約につながったという実績もあります。
無理に押し付けるのではなく、患者さんが「納得して選べる環境」を整えることが、自費率アップの鍵なのです。
まとめ
- 自費率アップには「納得」が不可欠
- 専任のTCがいなくても、歯科助手や受付スタッフが担える
- カウンセリングにはスキルと体制の両方が必要
- 歯科医師との情報共有が信頼を生む
- コーチング的関わりで患者さんの「決断」を後押しできる
患者さんが「この医院なら安心して任せられる」と感じてくだされば、それが最大のブランディングです。
“売る”のではなく、“信頼されて選ばれる”医院を目指すために、今ある人材を活かしながらできることから始めてみませんか?