注目を集める新しい働き方
近年、歯科業界でも働き方の多様化が進み、「フリーランス歯科衛生士」という新しいスタイルが注目を集めています。顧問先の歯科医院でも、直筆の手紙と履歴書が送られてきたと言って先生が見せてくれました。このような形で業務委託や非常勤で勤務契約を結ぶケースが増えてきています。今回は、この新しい働き方の魅力とともに、注意すべきトラブル事例についてもご紹介します。
自由度の高い働き方のメリット
まず、フリーランス歯科衛生士という働き方には、さまざまなメリットがあります。最大の特徴は、勤務時間や日数を自分で調整できるため、育児や介護といったライフスタイルに合わせて柔軟に働ける点です。また、複数の歯科医院で勤務することにより、多様な治療方針や症例に触れる機会が生まれ、スキルアップにもつながります。さらに、自費診療の経験や訪問診療の技術を持っている場合は、報酬条件を自ら交渉することも可能で、収入面でも優位性があります。こうした環境下で、自分の価値を自ら築いていくことができるため、プロ意識も高まる傾向にあります。
潜在的なトラブルとそのリスク
一方で、こうした自由な働き方にはリスクも存在します。特に注意が必要なのは、雇用関係の曖昧さによるトラブルです。業務委託契約のはずが、実際には医院の指示に従って勤務していたことで、後に「実質雇用」と判断され、労働基準法違反が疑われるケースもあります。また、スケーリング中のミスによる患者への損傷など、損害賠償を巡る責任の所在が明確でないと、医院側が不利益を被る可能性もあります。
情報管理と勤務態度に関する課題
加えて、患者情報の取り扱いにおいても注意が必要です。SNSへの不用意な投稿などにより、守秘義務違反が問われるケースも報告されています。さらに、接遇や衛生管理に対する価値観が医院と合わないことで、スタッフ間の摩擦や患者からのクレームにつながることもあります。そして、自由な働き方を理由に、急なキャンセルや無断欠勤が診療スケジュールに大きな影響を及ぼすといった問題も発生しています。
契約前に確認すべきポイント
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、契約前にいくつかのポイントを明確にしておくことが重要です。業務委託なのか雇用なのか、その区別をしっかりと行い、契約書に具体的な業務範囲や報酬、責任の所在などを明記する必要があります。また、医療過誤保険の加入有無や、損害賠償の責任区分についても事前に確認しておくと安心です。守秘義務やSNSの利用に関するルールも文書化して共有し、さらに医院の診療方針や接遇のポリシーをすり合わせておくことで、ミスマッチを防ぐことができます。
正しい理解と備えが成功のカギ
フリーランス歯科衛生士という新しい働き方は、柔軟性や自己実現の面で大きな魅力があります。しかし一方で、さまざまなトラブルになる可能性もあります。歯科医院がこの働き方を導入する際には、単なる人手不足解消にとどまらず、信頼関係を構築し、契約内容を明確にすることが成功のカギとなるでしょう。この働き方が歯科業界にとってプラスに働くよう、正しい理解と十分な備えを持って臨みたいものです。