― 求人票の「伝え方」で、採用の明暗は分かれました ―

人手不足に悩む中、とにかく応募数を増やしたい。応募数が多ければ必ずいい人材に巡り会えるのでは?
そして、求人サイト5社に掲載し、3ヵ月で集まった応募者は約60人。
驚くほどの反響でしたが、採用に至ったのはたったの1名。そして、その方もすぐに退職してしまいました。

一体、何がいけなかったのか――
求人票の“内容”と“伝え方”にこそ、大きな落とし穴があったのです。

以前、私が勤務していた歯科医院で、採用に力を入れていた時期がありました。
とにかく人が足りず、院長先生の指示のもと、複数の求人会社に掲載を依頼。
よく知られた求人会社だけでも、少なくとも5社と見積・打ち合わせを重ね、職種別に分けて掲載することになりました。

3ヶ月という掲載期間で、なんと60名近くの応募があり、こちらも正直驚きました。
ですが、それは同時に「応募対応に追われる日々」のはじまりでもありました。

毎日届く応募に、履歴書のチェック、メール返信、面接の調整…。
とにかく対応に追われ続けたのです。
それでも結果的に採用に至ったのは、たった1名。しかも早期退職という残念な結果でした。


条件を緩くすれば応募は集まる。でも…

なぜこうなってしまったのか?
振り返ってみて明らかだったのは、求人票の内容が“緩すぎた”ということでした。

求人票は、求人会社のライターさんにお願いして作成していただいたものです。
しかし、「できるだけ応募が来るように」と意識しすぎた結果、条件はかなり低めに設定され、ハードルの低い内容に。

たしかに応募は殺到しました。
けれど、医院が求める人物像と大きくかけ離れていたため、書類選考で不採用となる方がほとんど
そして採用に至った方も、院内の方針が求人票と違うと、すぐに退職してしまったのです。

医療の現場は「ただ優しいだけ」では成り立ちません。
甘い条件で人を集めても、結局はミスマッチが起こるのだと痛感しました。


欲しい人材と出会うために、求人票を見直し

この経験から私たちは考えを改め、医院の方針や大切にしていることを、しっかりと伝える求人票を自分たちで作ることにしました。

それは、決して優しい内容ではなく、むしろ「厳しめ」と思えるほど正直な内容。
求める人物像も明確にし、「誰でもウェルカム」ではなく、「こんな方を求めています」と、はっきり伝えるようにしました。


応募が減った。でも、結果は大きく違った

いざ、その求人票を公開すると……応募は激減。
あまりの反応のなさに「このまま誰も来なかったらどうしよう」と不安になりました。

でも、数日後、1通、また1通とポロポロと応募が。
応募数は少ないものの、厳しい条件を理解した上で応募してくれる方がいました。

その中から採用に至った方は、医院の方針をきちんと理解し、入職してくださったので、入職後も前向きに業務に取り組んでくれたのです。


求人票づくりで一番大切なこと

この経験を通じて私が強く感じたのは、
求人票は応募数を稼ぐための「宣伝」ではないということです。

✔ 求める人物像をしっかり伝える
✔ 医院の雰囲気やルールを隠さず提示する
✔ 曖昧な表現でごまかさない

そうした「伝え方の誠実さ」が、採用の質を大きく左右します。
求人会社やライター任せにせず、自院に合った人材と出会うために何を伝えるべきかを、私たち自身がしっかり考えていくことが大切なのだと思います。


【まとめ】

「応募が多い=成功」とは限りません。
大切なのは、“医院に合う人”と出会えるかどうかです。

たとえ応募者が少なくても、きちんとマッチした方と出会えるなら、それが一番の成果。
数ではなく「質」を重視する採用活動こそが、医院の未来につながると私は思います。