パラジウム高騰が歯科経営に与える現実的な影響
銀歯治療で使われる金属「パラジウム」が急騰し、治療を行うほど赤字になる歯科医院が増えています。
本記事では、パラジウム高騰の背景と、歯科医院が取るべき経営対策をディー・プラス・エス株式会社の視点から解説します。
虫歯治療で使われる銀歯(保険適用の「金銀パラジウム合金」)は、
日本の歯科医療における長年のスタンダードです。
この合金に含まれるパラジウム(Palladium)は、
歯科用金属の延性や耐久性を高めるために不可欠な貴金属ですが、
ここ数年、その価格が世界的に高騰を続けています。
実際に、パラジウムは国際市場で2021年以降、
1グラムあたりの価格が数倍に跳ね上がり、日本でも地金価格が上昇しています(GoldBroker・GoldNP調べ)。
また、研究データ(Jxiv)によれば、金銀パラジウム合金の価格上昇に伴い、保険請求件数が減少傾向を示すなど、
材料費高騰が歯科現場の経営実態に影響を及ぼしていることが確認されています。
原因は「戦争」だけではない──供給リスクと報酬制度のタイムラグ
報道では「ロシア・ウクライナ戦争による供給不安」が主因として挙げられますが、
実際には、貴金属供給の偏在化・国際相場の変動・為替の影響など、
複数の要因が複合的に作用しています(EconoTimes)。
さらに問題なのは、保険診療報酬制度の“反応の遅さ”です。
国が定める診療報酬点数は定期的に改定されますが、
原材料費の急激な上昇に即時対応する仕組みではありません。
Jxivの研究でも、材料価格の上昇が歯科診療報酬の実態と乖離していることが指摘されています。
つまり、歯科医師が「治療するほど赤字」と感じる背景には、
個別の医院経営だけではコントロールできない制度的なタイムラグが存在しているのです。
経営を「守る」ための視点──見える化と選択肢の拡大を
では、このような外的要因が避けられない中で、
歯科医院はどのように経営の安定を図ればよいのでしょうか。
① 治療単位ごとの「原価の見える化」
材料費・人件費・稼働時間を可視化することで、
診療行為ごとの収支を把握し、赤字構造を早期に特定します。
特に、銀歯など原材料コストの影響が大きい診療は、
経営指標として継続的にモニタリングすることが重要です。
② 代替素材や治療方針の「選択肢化」
パラジウムに依存しない素材(CAD/CAM冠、ジルコニアなど)の導入は、
患者満足度と経営安定の両立を図るうえで有効です。
自費診療とのバランス設計も、中長期的なリスク分散の一手となります。
③ 経営分析と「数字に基づく意思決定」
価格高騰・制度改定といった外部環境変化は、
“感じる”のではなく“数値で把握する”ことが持続可能な医院経営の鍵です。
まとめ:環境に左右されない「経営力」を
今回のパラジウム高騰問題は、
単なる材料費の上昇ではなく、歯科経営の脆弱性を浮き彫りにした象徴的な事例です。
“治療をすればするほど赤字”という現象を防ぐには、
診療技術に加えて、数字に強い歯科経営の感覚が欠かせません。
出典・参考資料
- YBS山梨放送(2025年11月7日)報道
- Jxiv「金銀パラジウム合金の価格変動と保険診療請求件数の関係」
- GoldBroker, GoldNP:貴金属価格データ
- EconoTimes:国際貴金属市場動向
- Ruby Dental, PwCヘルスケアレポート