〜保険と自費をどう伝えるかで、医院の未来が変わる〜

「自費診療を取り入れているが、なかなか自費が選ばれない」
「保険診療中心の体制から抜け出せず、経営の不安がある」
そんな悩みをお持ちの院長先生も少なくありません。

実際、患者さんに信頼されている歯科医院では、保険と自費のバランスを工夫しながら、患者さん自身が納得して自費診療を選んでいるケースが増えています。

今回は、無理なく自費診療を選ばれるための工夫について、トリートメントコーディネーターの役割も含め、5つのポイントに整理してご紹介します。


1. 自費診療は「提案」ではなく「選択肢」として示す

まず大切なのは、自費診療を「売り込む」姿勢ではなく、選択肢のひとつとして自然に提示することです。

たとえば——

  • 保険診療の内容とメリットとデメリットについて丁寧に伝える
  • 見た目や機能性を重視する方には、自費診療という選択肢について紹介する

「保険 or 自費」ではなく、「患者さん自身が選べる環境」を整えることで、納得度が高まり、信頼関係も深まります。


2. カウンセリングで共感を重視する

患者さんは、「歯を白くしたい」「目立たないものにしたい」といった希望を持っていても、それを歯科医師にうまく伝えられないことが多くあります。

特に初診や久しぶりの来院時は、「先生に言われた通りに…」と治療内容をあまり理解しないまま、頷いてしまうケースもあります。

ここで活躍するのが「トリートメントコーディネーター(TC)」です。
大型の歯科医院では常設されていることが多く、治療前後に時間を設けて、患者さんの思いや不安に丁寧に耳を傾け、治療内容をわかりやすく説明することで、患者と歯科医師の架け橋となってくれる存在です。


3. トリートメントコーディネーターの存在が医院の安心感を高める

治療後、受付で患者さんから「今の治療ってどういうことだったの?」と質問を受けた経験のあるスタッフも多いはずです。
本来なら診療中に理解できるのが理想ですが、緊張していたり、専門用語が難しかったりと、患者さんはなかなか聞き返せません。

だからこそ、あらかじめトリートメントコーディネーターが時間を取り、患者さんの話を聞き、疑問に答える機会を設けることで、満足度や信頼度は格段に上がります。

もちろん、歯科医師でもない、受付や歯科助手、トリートメントコーディネーターが勝手に答えられない内容もあります。補綴物の説明や料金などについては良しとしても、治療に関する質問などで、歯科医師の判断が必要な場合には、その場で患者さんに答えられません。

また、知識面では補綴や素材に関する勉強が必要ですが、何より大切なのは、患者さんに寄り添って耳を傾ける姿勢です。

小規模な歯科医院では専任スタッフを置けないケースも多いですが、

  • 受付スタッフが兼任する
  • 歯科助手が補綴知識を身につけて対応する
    といった方法でTCの役割をカバーすることが可能です。

4. 自費治療を“見える化”する

患者さんが安心して選べるよう、自費治療の情報を整理して“見える化”する工夫も欠かせません。

▼ おすすめの見せ方:

  • 院内掲示で自費メニューと保険治療の違いを比較
  • パンフレットやリーフレットを用意し、TCや受付が渡せるようにする
  • ホームページで事前に選択肢が見られるようにする
  • 治療前のカウンセリング時に、写真や模型を使ってわかりやすく説明する

“見える”ことで、「選ばされている」ではなく「自分で選んだ」という感覚が強まり、納得感のある診療へとつながります。


5. 院長自身が「価値」を信じて、伝える姿勢を持つ

院長が「自費診療の提案は気が引ける」と感じてしまうと、その空気は医院全体に伝わります。

しかし、自費治療は利益のためではなく、より良い治療のための選択肢です。
その価値を院長自身が信じて伝えることが、患者さんの選択を後押しします。

たとえば、
「こちらの素材は見た目が自然で、長く使えるので人気があります」
「保険診療でも対応はできますが、耐久性を考えるとこちらもおすすめです」
といったように、客観的かつ誠実に伝える姿勢が、患者さんの信頼につながります。


▼まとめ:患者との信頼を深める体制づくりが鍵

保険診療と自費診療のバランスを整えることで、
・患者満足度の向上
・スタッフの対応力の強化
・医院全体の信頼感アップ
といった成果が期待できます。

今日からできる5つの実践ポイント:

  1. 自費治療は選択肢として自然に提示
  2. 患者に共感しながらカウンセリングを行う
  3. トリートメントコーディネーターの役割を取り入れる
  4. 自費情報を“見える化”して不安を解消
  5. 院長自身が価値を信じ、誠実に伝える

小規模医院であっても、工夫次第で「自費が自然に選ばれる医院づくり」は可能です。
患者さんとしっかり向き合い、信頼のうえに成り立つ診療を目指して、ぜひ取り組んでみてください。