最近、ある歯科医院の院長先生からこんなご相談をいただきました。

「求人票を見たスタッフが“自分が入社した時よりも初任給が高いんだけど”と不満を口にしている、周囲のスタッフへの影響が心配」

このような声、実はよくあることです。

今、多くの業界で人手不足が深刻化しており、それに伴って新卒や未経験者の初任給を引き上げる企業が増えています。
実際、連合(日本労働組合総連合会)の発表によると、2024年春闘における平均賃上げ率は5.25%(3月21日時点)で、30年ぶりの高水準だった2023年の3.76%を大きく上回っています。

歯科業界も例外ではありません。若手人材の確保が難しくなる中で、初任給の引き上げは採用活動において有効な手段となっています。

しかし、その一方で注意が必要なのが、既存スタッフの不満やモチベーションの低下です。採用はもちろん大切ですが、すでに医院を支えてくれているスタッフを失うことは、それ以上の損失になります。

そこで今回は、院長として今後の給与設計やスタッフとの向き合い方を考える際に押さえておきたい3つのポイントについてを参考までに。


院長として考えておきたい3つのこと

① 給与制度の見直しを検討する

初任給を引き上げた場合、そのままにしておくと既存スタッフの不満が生まれやすくなります。勤続年数やスキル、貢献度に応じた公平な給与制度を、段階的にでも整えていくことが大切です。

② 評価制度で納得感をつくる

昇給や賞与の基準が見える化されていないと、スタッフは「評価されていない」と感じやすくなります。努力や成果が報われる評価制度があることで、給与以外でも納得感が生まれます。

③ 院長からスタッフへの説明と対話を大切に

「なぜ初任給を上げたのか」「今後どうしていくのか」などを、スタッフにきちんと説明する場を持ちましょう。誤解や不安は、放置すると職場全体の雰囲気に影響します。新人を除いた既存スタッフに、院長の考えを伝えることが信頼関係の維持につながります。


最後に

給与に関する不満は、本人のやる気や周囲との関係性に大きな影響を与えます。「不満を言っているのは一部」と思わず、他のスタッフも同じように感じている可能性があるという視点を持つことが大切だと思います。

スタッフの「採用」と「定着」はどちらも欠かせない要素です。バランスの取れた職場づくりのためにお考えになられてはいかがでしょうか。