日々の診療の中で、ちょっとしたスタッフの所作や言葉づかいが、患者さんにとっては気になる“引っかかり”になることがあります。
それが積み重なると、医院への印象が悪くなり、やがて「悪評」に繋がってしまうことも。
今回は、実際の現場で見聞きした事例をもとに、「医療現場としての意識」を改めて見直すきっかけになればと思い、まとめてみました。
【実際にあったびっくり体験】
ある歯科医院でのこと。スタッフが棚の扉を足で閉めたり、診療チェアを足で蹴って動かしている姿を、患者さんが目にしてしまったというお話を伺いました。
もちろん、治療中に器具を落とした場合などは、グローブの衛生管理の観点から、手で拾えず足で遠ざけるという判断は、安全のための正しい対応です。それは理解されています。
ですが、患者さんの視線の中で行われる“何気ない所作”が、無意識のうちに雑な印象を与えてしまうこともあるのです。
【扉を足で閉める、チェアを蹴る…その動作、見られています】
治療中、棚に器具を戻したあと、手がふさがっているからと足で扉を閉めたり、診療チェアを足でどかしたりする場面。これは、患者さんにとっては気になる行為です。
業務上の効率を優先した動作かもしれませんが、患者さんの目には「乱暴」または「雑に扱われている」という印象として映ることがあります。「無意識な雑な動作」は、決して良く映りません。現場では、患者さんだけでなく、出入りしている業者の方や、他のスタッフも見ています。医院全体の印象が悪くならないように一人ひとりが心がけるように指導しましょう。
【タオルで目がふさがっているからこそ、耳は敏感に】
治療中に顔にかけるタオルは、薬液や器具の飛散から患者さんを守るための配慮です。ただ、目がふさがれている状態は、患者さんは耳や鼻など他の感覚が研ぎ澄まされています。
このとき、スタッフ同士の雑談や笑い声、患者さんの口腔内についての会話が聞こえてしまうと、「自分のことを言われているのでは?」と不安を与える場合もあります。
患者さんの目に見えないところであっても、「聞こえているかもしれない」という意識を常に持ちましょう。
【言葉づかいも医院の印象を左右します】
患者さんに親しみを持って接しようという気持ちから、砕けた話し方になることもあるかもしれません。
たとえば、
- 「そっか」「うん、うん」「大丈夫でしたぁ?」
といった、語尾を伸ばす話し方やため口は、悪気がなくても患者さんには軽率に感じられることがあります。
「親しみやすさ」と「丁寧さ」は両立できるものです。
そのためにも、敬語を使う意識を常に持つことが大切です。
丁寧な言葉づかいは、相手への敬意のあらわれです。信頼される医療人として、ふさわしい話し方が自然とできるようになると、医院全体の印象もぐっと良くなります。なので、常に敬語を使う意識を心がけましょう。
【注意はタイミングと伝え方が大切】
もし現場で気になる行動を見かけた場合、なるべくその場で、周囲の目が届かないところにそのスタッフを呼んで注意するのが理想です。
事実と理由をセットで伝えることで、相手も納得しやすくなります。
時間が経ってからでは、本人の記憶も薄れ、注意されたことの意味が伝わりにくくなります。
悪意がない行動ほど、タイミングよく、冷静に、そして丁寧に伝えることが大切です。
【今こそ見直しのタイミングです】
4月に入職したスタッフも、そろそろ2ヶ月目。緊張がほぐれ、行動や言葉に「慣れ」が出やすい時期でもあります。
だからこそ、今が教育のチャンスです。
患者さんに安心して通っていただける医院づくりには、診療スキルだけでなく、スタッフ全体の所作や態度が大きく影響します。
何気ない動作やひとことを、医院の信頼を育てる機会に変えていけるよう、スタッフ一人ひとりが医療人としての意識を持ち続けられる環境づくりが必要です。