歯科衛生士の離職が、いま多くの歯科医院で深刻な課題となっています。
実際、現役の歯科衛生士の9割以上が職場で何らかのストレスを感じているという調査結果もあります。
貴院の歯科衛生士は、職場でストレスを感じていないでしょうか?優秀なスタッフの定着と医院の発展のために、この調査結果から見えてきた課題と解決のヒントをお伝えします。
調査データから見えた実態
「職場でストレスを感じることはありますか?」
歯科衛生士を対象にした職場環境調査では、次のような結果が報告されています。
- 頻繁にある:約4割
- たまにある:約5割
- あまりない:約1割未満
- 全くない:ごくわずか
9割を超える歯科衛生士が、程度の差はあれど職場でストレスを感じながら働いている現実があります。これは決して他人事ではありません。
最大の原因は「人間関係」
調査で最も多く挙げられたのが「人間関係」に関するストレスです。院長が想像する以上に、スタッフ間の人間関係は職場満足度を左右しています。
新人スタッフが抱える不安
新人の歯科衛生士からは、次のような悩みが多く聞かれます。
入職1〜2年目によくある声
- 立場上、理不尽と感じることがあっても言い返せず我慢してしまう
- 院長の方針や他職種スタッフとの関係に戸惑いを感じる
- 一人職場で相談相手がおらず、孤立感を覚える
新人は立場上、言いたいことを言えずに我慢していることが多いようです。また、他職種スタッフとの連携がうまくいかず、板挟みになっているケースも見られます。
中堅スタッフの本音
経験を積んだスタッフからも、深刻な悩みが報告されています。
入職3〜5年目によくある声
- 院長からの指示が曖昧だったり矛盾していたりしても、関係がこじれるのを恐れて黙って従うしかない
- 明確なマニュアルがなく、院長の期待する動きが理解できないまま叱責される
- 院長の機嫌が医院全体の雰囲気を左右してしまう
- 患者さんより同僚スタッフに気を遣う方が疲れる
特に注目すべきは、院長とのコミュニケーションに関する声です。指示の曖昧さや、期待値の共有不足が、スタッフの大きなストレスになっていることがわかります。
チームワークの欠如がもたらす弊害
職場環境調査からは、以下のような課題も浮き彫りになっています。
- 同僚の失敗を喜ぶスタッフがいて、チーム医療の意識が欠けている
- 特定のベテランスタッフから嫌がらせを受けても、誰も助けてくれない
- いい加減な仕事をする同僚のフォローをいつも自分一人がしている
- 態度の悪い後輩を誰も注意せず、放置されている
チーム医療を提供する歯科医院において、スタッフ間の協調性の欠如や一部スタッフの問題行動は、真面目に働くスタッフのモチベーションを大きく低下させています。
見過ごされがちな労働環境の問題
人間関係以外にも、改善すべき課題が数多く報告されています。
労働環境の厳しさ
- 忙しすぎてトイレや水分補給の時間も取れない
- 休暇を申請しづらい雰囲気がある
- スタッフが少なく、有給休暇を取得できない
- 診療が長引いて帰宅時間が読めない
基本的な休憩や休暇が取れない環境は、スタッフの心身の健康を損ない、離職の原因となります。
人手不足による過重負担
- 歯科衛生士が一人しかおらず、すべての業務を一手に引き受けなければならない
- 院長から矢継ぎ早に指示が飛んでくるが、作業中で手が離せない
- 複数の仕事を同時に抱え、常に追われている状態
成長機会の不足
- 専門誌や参考書などの学習資料が医院に用意されていない
- 知識や技術が不足していると感じても、学ぶ環境が整っていない
- スキルアップの機会が限られている
このような状況は、適切な人員配置ができていない、院長が多くを一人のスタッフに頼りすぎている、あるいは専門職としての成長を支援する体制が整っていないことを示しています。
ストレスの少ない職場の共通点
一方で、職場にストレスをほとんど感じていないという歯科衛生士も存在します。その方々の職場には、どのような特徴があるのでしょうか。
良好なコミュニケーション
- 院長やドクターと良好な関係が築けており、居心地が良い
- 意見が合わないこともあるが、基本的な人間関係が良好なので気にならない
- 風通しの良い職場環境で、のびのびと働ける
仕事へのやりがいを実感できる環境
- 患者さん一人ひとりと深く関わることができ、口腔内の変化に気づけることが嬉しい
- 自分のやりたい分野(外科、審美など)に専念できる医院で働けている
- 専門職としてのスキルを十分に発揮できる
やりたいことができる環境、患者さんとしっかり向き合える時間があることが、やりがいにつながっています。
思いやりのある職場文化
- 先輩が丁寧に指導してくれて、成長を実感できる
- 自分が働きやすいように周囲が配慮してくれていると感じる
- スタッフ同士が互いを尊重し、サポートし合える
このような職場では、スタッフ同士が互いを思いやり、助け合う文化が根付いていることがわかります。
院長先生が今日から取り組めること
これまで見てきた実態を踏まえ、スタッフの定着と医院の発展のために、以下の取り組みをご検討ください。
1. コミュニケーションの質を高める
- 明確な指示を心がける:曖昧な指示や矛盾した指示はスタッフを混乱させ、ストレスの原因になります
- 期待値を共有する:「自発的に動いてほしい」という思いがあるなら、具体的に何を期待しているのかを伝えることが大切です。
- 定期的な面談を実施する:スタッフが本音を言える場を設け、小さな不満が大きな問題になる前に対処しましょう
- 感情的にならない:院長の不機嫌な態度は医院全体の雰囲気を悪化させます
2. チーム医療の意識を育てる
- 問題行動には毅然と対応する:特定のスタッフの態度が他のスタッフのストレスになっている場合、放置せず適切に指導しましょう
- チームワークを評価する:個人の成果だけでなく、協力し合う姿勢も評価基準に含めましょう
- スタッフ間の関係性に目を配る:新人がベテランに萎縮していないか、いじめやハラスメントはないか、注意深く観察しましょう
3. 労働環境を整備する
- 適切な人員配置を実現する:一人のスタッフに負担が集中していないか見直しましょう
- 休憩・休暇を確保する:トイレや水分補給もできないほど忙しい状態は改善が必要です
- 業務の効率化を図る:不要な業務を削減し、スタッフが専門性を発揮できる時間を増やしましょう
4. 成長機会を提供する
- 学習環境を整える:専門書や雑誌の購入、セミナー参加費の補助などを検討しましょう
- スキルアップを支援する:得意分野を伸ばせる機会を提供し、やりがいを感じられる環境を作りましょう
まとめ
歯科衛生士の職場満足度は、医院の診療の質やチーム力、そして長期的な経営に直結します。スタッフが抱えるストレスに目を向け、一つひとつ改善していくことが、優秀な人材の定着と医院の発展につながります。
「スタッフは何も言わないから大丈夫」ではなく、「言えないだけかもしれない」という視点を持つことが重要だと思います。
今回の調査結果を参考に、スタッフが安心して長く働ける職場環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。スタッフの笑顔が、患者さんの笑顔につながり、医院の未来を明るくするはずです。