歯科医院のカスハラをめぐる最新動向
歯科医院のカスタマーハラスメント対策は、いまや避けて通れないテーマです。厚労省の認定基準にも追加され、東京都でも防止条例が制定予定。院長先生が医院全体で取り組む姿勢が求められています。
厚生労働省は昨年、心理的負荷による精神障害の労災認定基準に「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を追加しました。
さらに、2024年6月に発表された2023年度の労災補償状況によると、精神障害での労災認定は883件、そのうち52件がカスハラに関連しています。
労災に認定されるということは、もはや「現場スタッフの個人的な苦労」ではなく、業務上の問題=医院の責任とみなされることを意味します。
また東京都では、今秋にも「カスハラ防止条例」が制定予定であり、医療機関も例外ではありません。
歯科医院でのクレームとカスハラの違い
歯科医院では患者さんからのご意見やクレームをいただくことは珍しくありません。
しかし、その中には対応すべき「正当なクレーム」と、毅然と線を引くべき「悪質クレーム」「カスハラ」があります。
- 正当なクレーム:治療の説明不足や待ち時間など、改善の余地がある指摘。
- 悪質クレーム:過度な要求や理不尽な繰り返し。
- カスハラ:人格を否定する暴言、威嚇、長時間の拘束、SNSでの誹謗中傷など、スタッフの尊厳を侵害する行為。
「どこまでが正当なクレームで、どこからがカスハラか」を明確にしなければ、現場のスタッフは対応に追われ、疲弊してしまいます。
院長先生が果たすべき役割
クレーム対応はこれまで、受付やスタッフ任せになりがちでした。
しかし、今後は院長先生自身が「医院としての方針」を示すことが不可欠になります。
具体的には次のような取り組みが求められます。
- 歯科医院としての基準を定める
「この場合はカスハラとみなす」というラインをスタッフと共有しておく。 - 対応の仕組みを整える
現場で一人のスタッフが抱え込まず、困ったときには院長やマネージャーにすぐ相談・引き継ぎできる体制を整える。 - スタッフ教育の実施
「正当なクレームへの誠実な対応」と「カスハラへの毅然とした対応」を分けて判断できる力を身につける。 - 院長先生の姿勢を示す
「医院はスタッフを守る」というメッセージを発信することで、スタッフの安心感を高める。 - 外部の専門機関と連携
必要に応じて弁護士や歯科医師会の相談窓口を利用し、法的対応も視野に入れる。
まとめ
カスタマーハラスメントは、歯科医院にとっても無縁ではありません。
むしろ、受付や歯科衛生士などスタッフが患者さんと接する時間が長い分、リスクは高いとも言えます。
スタッフが安心して働ける環境を整えることは、結果として患者さんに対しても質の高い医療を提供することにつながります。
院長先生ご自身が「医院としての方針」を明確に示し、組織的に対応することが、これからの歯科医院経営に求められる重要な視点です。
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