歯科衛生士の「うつ病診断書提出」
これは、私が過去に勤務していた歯科医院で実際に起きた出来事です。
1年目の歯科衛生士が突然「うつ病の診断書」を提出してきました。
明るく真面目で、常に前向き。夜間学校に通いながら歯科衛生士資格を取得し、一般企業から転職してきた努力家の女性でした。
入社当初は「みんなより年上だから少し恥ずかしい」と笑っていた彼女。
仕事を覚えるのも早く、患者さんからの信頼も厚かったのですが、ある日突然、涙ながらに「仕事ができない」と相談を持ち掛けられました。
その後、少しづつ遅刻が増え、「疲れているのかな」と思っていたものの、まさかうつ病を発症していたとは誰も予想していませんでした。
診断書には「就労は困難であり、療養のため約1か月の休養を要する」と記載されていました。
その後も体調が回復せず、休職が延長され、最終的には退職という形になりました。
“本人の問題”ではなく、“職場全体の課題”
この出来事をきっかけに、医院ではスタッフ全員との面談を実施しました。
本人の努力や性格だけでなく、医院の環境そのものに原因があるのではないか――そう考えたからです。
院長とスタッフでは、見えている景色が異なります。
「院長は良かれと思ってしていること」が、スタッフにとってはプレッシャーになっていることもあります。
面談を通じて見えてきたのは、次のような“小さな違和感”の積み重ねでした。
- 業務量や担当の偏り
- 報告や相談のしづらさ
- 評価の不透明さや成長の共有不足
- 歯科医師からの叱責
- 上司からの感情的な注意
- 相談や報告を上司が無視
これらを放置すると、やがて心の負担となり、離職につながります。
医院では勤務体制、コミュニケーション、教育体制などを一から見直しました。
メンタルヘルスマネジメント資格取得で学んだこと
この経験を通じて、私自身もスタッフのメンタルケアの重要性を痛感しました。
そこで、職場のストレス対策や心理的安全性の知識を深めるために、「メンタルヘルスマネジメント®検定」を取得しました。
この資格を通して学んだのは、「職場環境の整備こそが、個人のメンタルヘルスを支える基盤になる」ということです。
歯科医院のような小規模チームでは、日常のコミュニケーションやちょっとした声かけが大きな支えになります。
歯科医院におけるメンタルヘルスケアの仕組みづくり
歯科業界では、少人数で密に連携するため、心理的安全性が職場の安定に直結します。
ディー・プラス・エス株式会社では、歯科医院の定着率向上を目的に、以下のようなメンタルヘルス支援を行っています。
● ストレスの「予防」と「早期発見」
- 定期的なスタッフ面談・匿名アンケートで現場の声を可視化
- 院長やリーダーが「メンタル変化のサイン」に気づける仕組みづくり
● 相談体制の整備
- スタッフが安心して話せる相談窓口を設置
- 「一人で抱え込ませない」文化を育てる
● 心理的安全性を高める研修
- 傾聴・感情マネジメント研修の導入
- 院内ミーティングでの対話促進
● 柔軟な働き方と休暇制度
- ライフステージに応じた勤務調整
- リフレッシュ休暇・有給取得の推進
「心の健康」は医院経営の土台
仕事のやり方を理解していても、心が疲れていては力を発揮できません。
スタッフが笑顔で患者さんに向き合うためには、まずスタッフ自身が安心できる環境であること。
それが医院全体の信頼関係と経営の安定につながります。
「うつ病の診断書提出」は特別なケースのように思われがちですが、実はその前に多くのサインがあります。
・コミュニケーションの減少
・小さなミスが増える
・朝の表情が暗い
・会話が減る
こうした変化に早く気づける体制を整えることが、離職防止の第一歩です。
まとめ:スタッフの心の健康を守ることは、医院の未来を守ること
この経験は、私にとって大きな学びでした。
メンタルヘルス対策は特別なことではなく、日常のマネジメントの一部です。
スタッフが安心して働ける職場づくりは、結果的に定着率向上・患者満足度向上にもつながります。
ディー・プラス・エス株式会社では、
歯科医院の「職場環境改善」「心理的安全性のあるチームづくり」「スタッフ面談の仕組み化」をサポートしています。
小さな違和感を見逃さず、働き続けたくなる医院づくりを実現しましょう。
厚生労働省|事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集