~怒鳴る・文句を言う・電話が切れない…“カスハラ”から医院を守るために~
クレーム対応で疲弊していませんか?
受付で怒鳴る、歯科衛生士やドクターに文句を言う、大きな声で不満をぶつける…。
一部の患者による過剰な言動=“カスタマーハラスメント(カスハラ)”
件数としては多くないものの、一度起きれば医院全体に大きな影響を与えるため、「悩んでいる」と感じる歯科医院が増えています。
公益社団法人日本歯科医師会の2020年の調査では、治療に「不満」と回答した人はわずか数%、まったく満足していない人は1%程度という結果が出ています。
それでも、モンスターペイシェントのような対応困難なケースはスタッフの精神的負担や院内の業務停滞につながるため、無視できない問題です。
実は「不満足な患者」はごく少数
冒頭でもお伝えしたように、2020年、日本歯科医師会が10,000人を対象に行った調査では、
歯科治療に「満足」と回答した人は約8割。
「不満足」と答えたのはわずか数%、まったく満足していない人は1%程度でした。
つまり、カスハラにつながるようなトラブル患者は100人に1人程度と推測されます。
少数であっても、対応を誤れば大きなストレス・業務妨害・風評被害につながりかねません。
電話対応で特に注意すべきこと
カスハラの多くは「電話」で起きます。
厚生労働省の調査によると、「同じ内容を長時間繰り返すクレーム」が全体の52.0%を占めており、歯科医院でも、長電話による被害が多発しています。
- 予約用の電話回線がふさがれ、他の患者対応ができない
- 受付スタッフが疲弊し、本来の業務に集中できない
- 周囲のスタッフのフォローが必要になり、医院全体の業務効率が落ちる
顧客からの著しい迷惑行為のうち、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム」が52.0%で最多。
(出典:「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)」p.15)
▶ 効果的な電話対応の工夫
「この通話は録音させていただいております。あらかじめご了承ください。」
この一言を冒頭に入れることで、相手の態度が変わるケースが非常に多いです。
録音という“証拠”が残ることを意識するため、冷静になる傾向があります。
現場でできるカスハラ対策【実践編】
① 必ず複数名で対応
1対1の対応はリスクが高く、相手の威圧にのまれやすくなります。
受付・副院長・リーダー衛生士など2人以上で対応しましょう。
② 言い争わず、話を「受け止める」
カスハラをする人は、自分が絶対に正しいと思っています。
説明や正論は逆効果になる場合もあります。まずは、
「ご不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ありません」
と一度受け止めて冷静にさせることが重要です。
③ 長時間のクレームには明確に線を引く
・「お話は承りましたので、これで失礼いたします」
・「これ以上は業務に支障が出ますので、お電話を終了します」
・1時間以上にわたる場合:「業務妨害と判断し、警察に相談いたします」
毅然と、しかし感情的にならずに対応する姿勢が大切です。
未然に防ぐ仕組みづくり
・無断キャンセル・遅刻の多い患者への対策
- 「無断キャンセル3回で予約不可」
- 「15分以上の遅刻で診療キャンセル」
など、事前にルールを明示し、受付対応にも一貫性を持たせましょう。
・問題行動の共有と記録
- トラブルが起きたらスタッフ全体に共有
- 院内で“要注意患者リスト”を作成し、対応方針を統一
・警察への相談も視野に
- 威嚇・暴言・大声などの行為は「威力業務妨害罪」に該当することがあります。
- 「〇〇警察署に相談しています」と伝えるだけでも、抑止力になります。
院内掲示で“カスハラ抑止力”を高める
厚生労働省では、カスタマーハラスメント防止ポスターを無料で配布しています。
受付や入口、待合室に掲示することで、あらかじめ患者に注意を促すことが可能です。
→ ダウンロードはこちら
厚生労働省 カスハラ対策ポスター
まとめ:医院を守るのは「準備」と「仕組み」
歯科医院は医療機関であると同時に、サービス業でもあります。
患者満足は重要ですが、一部の悪質な言動からスタッフを守ることも、経営者としての大切な責任です。
- 明確なルール
- チームでの対応体制
- 書面・音声での記録
- 必要に応じた法的対応
これらを整えることで、スタッフも安心して患者さんに向き合える医院づくりが可能になります。
先生ご自身やスタッフが日々、安心して診療に集中できるよう、今こそ「困った患者対応の見直し」をおすすめします。