「抗生物質が不足していて、抜歯しなきゃいけない場合でも、こんなんじゃできないんですよ。」
訪問先の先生がおっしゃっていたことです。これは決して誇張ではなく、いま歯科業界で実際に起きている現実です。
何が不足しているのか?
- アモキシシリン(ペニシリン系)
歯科でよく使う第一選択薬。現在、複数メーカーが「限定出荷」を公表しており、必要な時に確保できないケースが出ています。 - 経口セフェム系(セフカペンピボキシル、セフジトレンピボキシルなど)
こちらも同様に出荷制限がかかっており、代替薬への切り替えを余儀なくされています。
厚労省も「経口抗菌薬の供給が逼迫している」と公式に通知しており、歯科診療に直接影響しているのは事実です。
歯科現場で実際に起きていること
- 院内処方が難しい:在庫が確保できず、院外処方に切り替えるケースが増えています。
- 外科処置の延期:抗菌薬が手元にないため、抜歯などの処置を控えざるを得ないケースも。
- 代替薬への切り替え:第一選択薬が使えず、広域抗菌薬を使用する場面が増えています。
実際に行われている対応例
- 地域薬局と在庫を共有する
抜歯や外科処置の前に、薬局に在庫を確認しておく。 - 代替薬の使用ルールを院内で統一する
どの薬に切り替えるかをスタッフ間で明確にしておく。 - 処置スケジュールを見直す
感染リスクが高い場合は、薬の確保状況に合わせて調整する。 - 基本的な感染対策を徹底する
抗菌薬が十分に使えない分、滅菌や術後指導を一層強化する。
まとめ
「抗生物質がないから処置できない」という先生の声は、今の歯科業界で広く共有される課題です。
供給不足はすぐに解消される見込みは薄いため、薬局との連携・代替薬の検討・院内のルールづくりが不可欠です。
患者さんに不安を与えないためにも、できる対応を一つひとつ積み重ねていくことが求められています。