歯科助手 休めない——この言葉は、小規模歯科医院で働くスタッフからよく聞かれる悩みの一つです。急な子どもの発熱や家庭の事情があっても言いづらく、スタッフ同士の負担が偏り、職場の雰囲気まで悪くなってしまうことがあります。これは、小規模歯科医院では歯科助手に限らずに起きていることです。
今回のコラムでは、実際に現場で起きたケースをもとに、この問題の背景と、医院が改善できるポイントについて考えてみたいと思います。
今日、顧問先の歯科医院でスタッフの方から、とても印象的なお話を伺いました。
「先日、子どもが熱を出して学校を休んだんですけど、仕事を休めなかったんです…」
困った表情でそう話してくれたスタッフの方。
その日は、他のスタッフがすでに休みを取っていたため、言い出しづらかったとのことでした。
結局、熱のあるお子さんを一人家に置いて出勤したスタッフの気持ちを想像すると、その胸の痛みは計り知れません。
医療の現場で働くスタッフも、一人の親であり、家庭を支える存在です。こうした“葛藤のある状況”は、どの医院でも起こり得ることだと思います。
だからこそ、「いざ」という時に安心して声を上げられる環境づくりは、医院運営において欠かせないと感じています。
■既存スタッフへのしわ寄せと、現場に生まれるネガティブな空気
実際、今回のようなケースが起こると、どうしても既存スタッフへの負担が増えてしまいます。
誰かが無理をすれば、別の誰かがその分を背負う。
その“連鎖”の中で、スタッフの心には少しずつ疲れが溜まっていきます。
院長先生が不在の昼休みになったとき、ネガティブな言葉が増えてしまうのは、その表れかもしれません。
「このままではよくないな」
そう強く感じた出来事でもありました。
医院としては、すでに求人を出している段階なので、今後採用につながる可能性はあります。
しかし一方で、今いるスタッフが新人に対して“ネガティブな環境情報”を吹き込んでしまうという別の問題が見えてきました。
その前に、入ったばかりで辞めてしまったスタッフがいたのですが、どうやら、ネガティブな話聞いていたせいで、不安になってしまったというのです。
「ここは急な休みが取れないからね…」
そんな言葉を新人スタッフが聞いたらどう感じるでしょうか。
不安が募り、医院のイメージは一気にマイナスに傾いてしまいます。
せっかく入職してくれた人が、不安の中でスタートするのは本当に惜しいことです。
■環境を好転させるためにできること
今回の出来事から改めて感じたのは、
問題は“急な休み”そのものではなく、それにまつわるスタッフ同士の心理的負担や、共有される空気にあるということです。
だからこそ、医院としては次のような対策が重要になります。
- 急な休みが必要なときの優先順位や判断基準を明確にし、全員で共有する
- シフト調整のルールを整理し、誰かだけが不利にならない仕組みをつくる
- スタッフ同士が安心して言い合える“風通しのよい場”をつくる
- 新人への情報共有はポジティブな視点を含め、「医院としてどう考えているか」をセットで伝える
特に、“急な休み=悪いこと”という価値観が残っていると、誰も言い出しにくくなり、負の連鎖が起きます。
これを断ち切るには、医院全体での意識改革が必要です。
誰もが安心して働ける環境は、医院の安定につながり、患者さんにとっても大きな安心材料になります。
今回の出来事は、医院が次のステップへ進むための“サイン”なのかもしれません。
現場の声に耳を傾けながら、スタッフが気持ちよく働ける環境づくりを、医院と一緒に進めていきたいと思います。