数字化しにくい職種を“見える化”して報酬に反映する方法

歯科医院において 「歯科助手の評価制度」 をどう作るべきか——多くの院長先生が悩まれるテーマです。歯科衛生士と違い、歯科助手(DA)は数字で成果を示しにくく、能力差を給与に反映させることが難しい職種です。本コラムでは、小規模医院から中規模医院まで実践できる、DAの能力を公平に見える化する評価制度の作り方をご紹介します。

歯科衛生士(DH)は歩合制や保険点数など、成果を数字で捉えやすい職種です。一方で、歯科助手(DA)は“お金を直接生まない職種”のため、能力差をどう給与に反映するか、院長先生が抱える悩みのひとつです。

実際には、DAの能力差は医院の生産性に大きく影響します。

  • 自分で考えて動ける DA
     → 院長やDHの仕事がスムーズになる/治療効率が上がる
  • 受け身で指示待ちの DA
     → アシストに入りたがらない、手が空けばおしゃべり…医院全体の質が落ちる

しかし、この「能力差」を給与に明確に反映しづらいことが問題なのです。


DAの評価が難しい理由は“数値化できない”から

DAの仕事は、

  • 気づき
  • 立ち回り
  • 先読み
  • チームサポート
    といった“見えない価値”で成り立ちます。

数字で説明できないため、
「なんとなく高い」「なんとなく低い」
という 感覚評価になりがち です。

院長先生としても、“感覚”だけで給与に差をつけるのは納得感が出にくいと思います。


評価を“見える化”する方法:役割(係)に手当をつける

他院でも取り入れられている、実践的で効果の高い方法があります。

それが “能力の高いDAに役割(係)を任せ、その責任に手当を付ける” 制度です。

① 評価は誰が行う? → 規模によって変わります

小規模歯科医院(DA3名前後)
院長先生が直接評価 を行います。

  • 主体性
  • 視野の広さ
  • 時間価値の理解
  • 院内の流れを止めない立ち回り
  • アシストへの積極性

これらを日々の動きの中で観察し、面談などでフィードバックします。

小規模の場合はスタッフにも近く、院長自身が最もスタッフの動きを理解しているため、評価の公平性が高まります。

中規模以上(幹部や主任がいる医院)

幹部スタッフが評価→院長が最終判断
という二段階で進める医院が多いです。


② 評価の高いDAに“係”を任せる

能力が高いDAに、医院運営に直結する役割を任せます。
例として、次のような係があります。

  • 在庫管理
  • 新人教育
  • 受付のサポート
  • マニュアル整備
  • 院内研修の取りまとめ
  • 器具管理・滅菌管理のリーダー

“責任ある仕事を任せられている” こと自体が、評価の証明になります。


③ 係ごとに手当をつけ、報酬に反映する

ここがポイントです。

係の数や責任の重さによって、
役割手当という形で給与に反映する。

これなら、

  • 「能力の高いDA」の給与が上がる
  • 「受け身のDA」との差が自然につく
  • 評価の根拠が明確になる

という 公平で納得度の高い仕組み ができます。


✔ 数値化しにくいDA評価が“役割”として見える化される

「頑張っている」「気づけている」といった曖昧な評価を
“担当している係”
として具体的に示すことができます。

✔ モチベーションが上がり、主体性が育つ

「任される → 認められる → 報酬に反映される」
という流れが生まれ、やる気のあるスタッフは自然と成長します。

✔ 院長が“感覚”で判断するリスクが減る

小規模医院では特に、
院長の感覚と距離の近さが、逆に不公平感を生むことがあります。
役割制度はそのリスクを下げます。


まとめ:能力差の明確化は“制度”で実現できる

  • DAは成果を数字で示しづらい
  • だからこそ、評価に困る院長が多い
  • 役割(係)+手当という制度なら公平に差をつけられる
  • 小規模医院では院長自らの評価で十分成立する

能力の高いDAにはそれを正当に評価し、
報酬として返す仕組みを整えていくことが、
医院全体の生産性向上につながると感じます。