~小規模歯科医院こそ大切にしたい「社会人マナー・ビジネスマナー」~
院長先生の本音
「こんなこと、言いたくないけれど……」
ある小規模歯科医院の院長先生が、こんな悩みを打ち明けてくれました。
「こんなことは本当は言いたくないんだけど、うちの歯科衛生士はビジネスマナーを学んでいないから、上司と部下の関係性を理解していない気がする。報連相がうまくできていない。このままではよくないなと思うんだけどね。」
このような声は、決して珍しいものではありません。特にスタッフ数が限られた小規模歯科医院では、一人ひとりの行動が組織全体に与える影響が大きく、「報告・連絡・相談(報連相)」が機能しないと、後のトラブルや院長先生の知らないところでの勝手な判断・行動が積み重なってしまいます。
なぜ報連相が必要なのか?
~医療技術と同じくらい大切な「組織で働く」という意識~
歯科医院は医療機関であると同時に、スタッフ全員で支え合う「組織」でもあります。
どれだけ医療技術に優れていても、院長の知らないところで勝手な判断や取り決めが行われていれば、患者さんへの対応にズレが生じ、最悪の場合、医院の信頼低下にもつながりかねません。
報連相がない職場では、以下のような問題が発生しがちです。
- 院長の承認を得ていない変更や取り決めが現場で勝手に行われる
- 情報共有ができておらず、同じ質問・作業のやり直しが発生
- クレームやトラブルが起きたとき、誰も責任の所在を明確にできない
- スタッフ間の信頼関係にヒビが入る
これらの問題の根本にあるのが、「ビジネスマナーや社会人マナーの不足」です。
歯科衛生士やスタッフにビジネスマナーは必要ない?
~いいえ、だからこそ必要です~
「歯科衛生士には専門技術があるから、ビジネスマナーは二の次でいい」と思われることもあります。
しかし、患者さんや院長、他のスタッフと連携しながら働く歯科医院という環境では、社会人としてのマナーやビジネススキルがあって初めて、専門性が活きるのです。
特に、以下のような力は小さな組織では重要です。
- 患者さん、スタッフ同士はもちろん、歯科医師への敬意ある言葉遣い
- チームで働く上での「報告・連絡・相談」の基本
- 自分の考えを伝える際の順序や配慮
- 院内ルールや方針に従うという組織人としての意識
指示が伝わらないことで現場が混乱することも…
実際に、指示の出し方や伝達方法に問題があり、スタッフ間での誤解やトラブルに発展した事例もあります。
紙のノートに残すだけの伝達や、曖昧な指示が誤解を生み、現場が混乱してしまうケースです。
このような事例と、デジタルツールを活用した改善策については、以下の記事で詳しく紹介しています
👉 伝わらない指示が現場を乱す
現場がスムーズに機能するためにも、「伝える力」はとても重要です。
解決策:技術研修と並行して「社会人研修」の導入を
多くの院長先生が見落としがちなのが、「技術研修」はしていても「ビジネスマナー研修」はしていないという点です。
小規模歯科医院だからこそ、次のような取り組みが効果的です。
1. 社会人マナー研修の実施
新人だけでなく、既存スタッフにも「社会人としての基本」を再確認する機会を設けることで、報連相や敬語、職場での立ち居振る舞いが改善されます。
2. 報連相ルールの明文化
「この場合は必ず院長に報告」「この連絡は連絡ツールではなく口頭で行う」など、医院ごとの報連相ルールを紙にして共有・掲示すると行動が定着しやすくなります。
3. 院内ミーティングの定期化
月1回でもよいので、院長とスタッフ全員で情報を共有する場を設けることで、相互理解が深まり、勝手な判断が減ります。
スタッフ教育は「医院の未来への投資」
ビジネスマナーや報連相は、特別なことではありません。
ただ、「誰かが教えなければ、誰も知らないまま」になってしまうのです。
小規模な歯科医院ほど、スタッフ一人ひとりの意識や行動が医院の空気や信頼に直結します。
だからこそ、院長が「技術」だけでなく「人としての成長」にも目を向け、教育に取り組むことで、スタッフの自立性とチーム力が高まります。
社会人マナーの研修=医院の土台づくり。
それは、患者さんにも安心と信頼を届けることにつながっていきます。