採用面接の際に、前職を辞めた理由を尋ねると「院長のパワハラが原因で…」と話す方や、前職の悪口、内部事情を語る応募者が時々います。もちろん、それが事実かどうかを面接時に判断するのは難しいところですが、そのような話し方をする方は、注意したほうがいいと思います。

ある顧問先の先生のお話では、過去に「前の職場で人間関係に問題があった」「歯科医師からのパワハラがあった」とネガティブな退職理由を話す方を、当時スタッフが足りなかったこともあり悩んだ挙句、採用したそうです。最初のうちは前向きに仕事をしてくれていたのですが、半年ほど経ったころ、今度は既存スタッフとの間でトラブルが起こり、最終的にはその方自身が退職してしまったそうです。
さらにその出来事は、長く勤めていた既存スタッフにも大きな精神的ダメージを与え、以前のような前向きな姿勢を失ってしまったといいます。
人間関係のトラブルは、当事者だけでなく周囲のスタッフの士気にも影響するため、採用の判断が歯科医院全体の雰囲気に及ぼすことをあらためて実感されたそうです。

小規模な歯科医院では、一人スタッフが抜けるだけでも診療に支障が出てしまいます。人が足りない状況では、残っているスタッフの負担も増え、休みも取りづらくなり、院内全体が疲弊してしまいかねません。


採用時は「慎重さ」と「余裕ある体制づくり」が鍵

このような事態を防ぐためにも、日頃からスタッフ体制には“余裕”を持たせておくことが大切です。採用が難しい状況が続いているのは事実ですが、たとえばパート勤務の方をうまく取り入れて、柔軟な勤務体制を整えておくことで、急な欠員にも対応しやすくなります。


歯科衛生士の採用は「求人の出し方」が勝負

特に歯科衛生士の採用は、地域によって求職者の母数が大きく異なり、応募自体が少ないというケースもあります。ただし、求人票の出し方や訴求内容を工夫することで、反応が得られることも少なくありません。勤務時間の柔軟性、働きやすい職場環境、明確な評価制度など、医院の魅力をしっかり伝えることが大切です。

また、求人票は「実際にその医院で働くイメージが湧く」内容になっていることが重要です。たとえば、日々の業務内容や一緒に働くスタッフの雰囲気、医院の方針などを具体的に伝えることで、応募者の関心を引きやすくなります。他の歯科医院とどう違うのか、自院ならではの魅力や働きがいを伝えることで、応募者に「ここで働いてみたい」と思ってもらえる可能性が高まります。

一方で、歯科助手や受付スタッフの募集は、比較的応募が集まりやすい傾向にあります。未経験可やパート勤務歓迎といった条件を掲げることで、さらに幅広い層にアプローチすることができます。

長く働いてもらうためには、採用時の見極めが何より重要です。慎重な採用と、柔軟な人員配置で、安定した運営体制を築いていきたいですね。