社会全体で衛生意識が高まる中、医療機関、特に歯科医院に求められる感染対策は大きく進化しています。
従来は「きちんとやっているのが当たり前」とされてきた衛生管理ですが、現在では “患者さんに見える形で伝えること” が信頼を得る鍵になりました。

歯科医院は治療器具の使用により、水しぶきや細かい粒子が広がりやすい環境が生まれることがあります。
そのため、院内の空気環境づくりや衛生管理は、患者さん・スタッフ両方の安心を守るうえで欠かせない要素です。

本コラムでは、院長先生・スタッフの皆さまが明日から実践しやすい、最新の感染対策アップデートをまとめました。


1. “安心感”の判断基準が変わった今、歯科医院に求められる姿とは

来院される患者さんの多くが、医院の衛生状態を“見た瞬間の印象”で判断します。

特に重要視されるのは以下のポイントです。

  • 清掃や消毒が「見えるように」実施されているか
  • 空気がこもっていないか
  • 受付や待合室に整理整頓がされているか
  • スタッフの健康管理や見た目の清潔感

つまり、感染対策は “医療品質の証明=医院ブランド” としての役割も担うようになりました。


2. 空気環境への投資は、医院の“質の高さ”を示す

◆ 空気清浄機の導入ポイント

歯科治療では、器具の動作により空気中に細かい粒子が飛びやすいため、空気環境の整備が安全対策として重要です。
特に注目したいのは以下の点です。

  • HEPAフィルター搭載のモデルを選ぶ
  • 診療室の広さに見合った風量が確保されているか
  • 設置場所(チェア付近・空気の滞留しやすい場所)
  • 交換日やメンテ状況を見える化する工夫

空気清浄機は「あるだけ」ではなく、患者さんに“稼働している安心感”を伝えることが大切です。

◆ 換気は“仕組み化”が鍵

自然換気と機械換気を組み合わせ、1時間に数回の空気入れ替えが理想です。

  • 定期的に換気するタイミングをルール化
  • 入口に「換気中」サインを掲示
  • 空気の通り道を作るレイアウト調整

大きなコストをかけなくても、患者さんが受ける印象は格段に良くなります。


3. 清掃・消毒は「見える化」することで安心につながる

◆ 患者さんが特に気にする箇所

歯科医院では、患者さんが触れやすい場所は重点ポイントとなります。

  • ドアノブ
  • 受付まわり
  • 会計トレー
  • トイレ
  • 診療ユニット周辺

これらは、年間を通してこまめな消毒を続けたい場所です。

◆ “消毒済み”を視覚化する小さな工夫

  • チェアに「消毒済み」カードを置く
  • スタッフが消毒している様子を見える場所で実施
  • 日次・時間帯ごとの清掃チェック表を掲示

患者さんに「きちんと管理されている医院」という印象を与え、信頼感が大きく高まります。


4. 患者同士の距離と予約管理は、感染対策と生産性を両立させる

◆ 待合室の密を避けるレイアウト

  • 座席間を広げる
  • 立ち位置をわかりやすく示す
  • キッズスペースの人数制限
  • 受付前に人が滞留しない導線づくり

快適性と感染対策を両立させる、医院の工夫が問われます。

◆ 過密予約の解消はスタッフの負担軽減にも

  • 初診枠と再診枠を分ける
  • チェア稼働数を制限
  • スタッフ人数に合わせて1日の予約量を調整

時間管理は、感染対策の面でも、医院運営の安定化という面でも重要です。


5. スタッフの健康管理は“医院の信用”そのもの

スタッフが安心して働ける環境は、結果的に患者さんの安心にもつながります。

◆ 日々の体調チェックを習慣化

  • 出勤時の体調報告
  • 風邪症状がある場合の早期申告ルール
  • 正しい手指衛生の徹底
  • マスクやグローブの交換タイミングの統一ルール

「無理をしないで働ける環境」をつくることで、結果的に業務の質も向上します。

◆ 教育・共有の場で意識統一

  • 月1回の衛生管理ミーティング
  • 新人スタッフへの標準化された研修
  • 院長・チーフからの定期アナウンス

スタッフ全体の衛生意識が揃うと、患者さんに伝わる安心感の質が変わります。


まとめ:衛生管理の強化は“選ばれる医院づくり”の基盤になる

歯科医院に求められる感染対策は、「やって当たり前」から“患者さんに選ばれる理由”へと変わりました。

空気環境、清掃・消毒、待合室の導線、予約管理、スタッフ教育まで、
これらの取り組みを患者さんに知ってもらうことが大切です。

安心できる環境づくりは、患者さんへの誠意そのものであり、
地域から信頼される歯科医院になるために衛生管理の再確認をしてみてはいかがでしょうか。

日本歯科医師会 「新たな感染症を踏まえた歯科診療ガイドライン」