増え続ける外国人患者に、歯科医院ができること
近年、日本で暮らす外国人の数は年々増加しています。法務省のデータによれば、平成28年末時点で在留外国人数は約238万人に達し、これは統計を取り始めて以来、過去最多となったとのこと。前年から6.7%の増加というこの数字には、中長期在留者や永住者も含まれており、今後もさらに増えていくことが予想されます。
また、観光や仕事、留学などで日本を訪れる短期滞在の外国人も多く、街中で外国語を耳にする機会は確実に増えています。こうした中、医療機関、特に歯科医院においても外国人患者への対応力が求められつつあります。
外国語対応を進める歯科医院の事例
すでに一部の歯科医院では、外国人の診療に備えた体制づくりを始めています。たとえば、英語に堪能な院長が在籍する歯科医院では、英語での問診表、説明、治療案内を整備し、多国籍の患者を受け入れています。対応言語も英語だけでなく、ポルトガル語や中国語、ロシア語、スロバキア語など、多岐にわたります。
「英語が話せないから無理」と諦める必要はありません。NPO法人などが提供している多言語対応の医療用問診表(中国語、ベトナム語、スペイン語、韓国語、タガログ語など)を活用すれば、基本的なやり取りは可能です。
さらに、厚生労働省が公式に公開している「歯科用の英語版問診票」も無料でダウンロードできます。簡潔で実用的なフォーマットになっており、英語対応を始める第一歩として非常に有用です。
🔗 英語の問診票(歯科)ダウンロードはこちら:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000057033.pdf
医院の周辺地域に多い外国語に合わせて、必要な言語の問診票を準備しておくと安心です。
歯科治療を目的に来日する外国人も
外国人患者の中には、旅行中に突然の痛みやトラブルで歯科医院を訪れる方もいれば、日本の歯科治療を受けることを目的に来日する人もいます。
特にアメリカやヨーロッパなど、歯科治療費が高額な国に住む外国人や海外在住の日本人にとって、日本の歯科治療費の安さと技術力は大きな魅力です。例えば、アメリカ・ニューヨークでの歯のクリーニングは1万円以上が相場ですが、日本では保険適用で2,000円前後で済みます。抜歯や相談料なども、日本の方がはるかに安価です。
保険証の有無による対応の違い
外国人患者の診療で特に気をつけたいのが保険証の有無です。治療内容が保険適用範囲内であっても、保険証の提示がなければ10割負担、つまり全額自費となります。
日本で働く外国人や留学生の多くは、社会保険や国民健康保険に加入しているため、通常通り保険診療が可能です。しかし、短期滞在の観光客や在留資格が切れているケースでは、保険が適用されず、全額自費になります。
この点を事前にしっかりと説明しておかないと、トラブルの原因にもなりかねません。対応策としては、治療前にデポジット(前金)を預かる、または明確な料金説明を外国語で行うなどの準備があると安心です。
歯科医院でできる外国語対応の工夫
外国語に不安がある場合でも、ちょっとした工夫で外国人患者とのコミュニケーションを円滑にすることができます。
- 多言語対応の問診票を準備
- よく使うフレーズをまとめた「指さし会話表」を作成
- 治療説明や注意事項のテンプレートを多言語で用意
- 可能であれば翻訳アプリや通訳サポートサービスの活用も検討
医院全体で外国人対応に前向きな姿勢を持つことが、患者に安心感を与える大きなポイントになります。
外国語対応は「今すぐ始められる取り組み」
日本の歯科医療は、質の高い治療をリーズナブルな費用で受けられる点で、国内外からの高い評価を得ています。今後さらに増加が見込まれる外国人患者への対応は、歯科医院の「選ばれる理由」の一つになるかもしれません。
まずは、問診票などのツールを準備することから始めてみませんか?