歯科医院 外国人患者対応は、もはや一部の医療機関だけの課題ではありません。
厚生労働省が公表した実態調査から、現在の医療現場で何が起きているのかを読み解きます。
令和6年度、厚生労働省より「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果が公表されました。本調査は、全国すべての病院と一部都道府県の診療所(歯科診療所を含む)を対象に行われたもので、現在進行形の医療現場の実態を示す非常に示唆に富んだ内容です。
訪日外国人の回復、在留外国人の増加に伴い、医療機関を受診する外国人患者は今後も増えることが想定されています。今回はこの調査結果を土台に、歯科医院という医療現場全体として、どのような課題があり、どのような備えが求められているのかを考えてみたいと思います。
約半数の病院が外国人患者を受け入れているという現実
調査によると、2024年9月の1か月間で、回答した病院の約5割が外国人患者の受入実績ありという結果でした。拠点的医療機関では約9割にのぼります。一方で、多くの病院では「月10人以下」の受診が最も多く、
“頻繁ではないが、確実に遭遇する”
という状況が浮き彫りになっています。
これは歯科医院でも同様です。日常的ではないものの、突然の対応を求められる。そのときの準備状況が、医院全体の印象を大きく左右します。
受入体制は「整えていない」が多数派
注目すべきは、体制整備の状況です。
- 自院の外国人患者数を把握していない病院:約7割
- 受入体制の課題抽出をしていない病院:約8割
- 受入体制方針やマニュアルを整備していない病院:約9割
つまり、多くの医療機関が「何となく対応している」状態であることが分かります。
これは決して怠慢ではありません。
- 人手不足
- 日常業務で手一杯
- 「そこまで多くない」という認識
こうした現実があるからこそ、後回しになっているのです。
対応力の差は「仕組みの有無」で生まれる
一方、JMIP・JIH認証医療機関では、
- 現状把握
- 方針整備
- マニュアル作成
が約9割の施設で実施されていました。
ここで重要なのは、語学力や特別な人材の有無ではないという点です。
実際、医療コーディネーターの多くは
- 事務職員が兼任
- 院内調整や説明が主な役割
という結果でした。
つまり、
「誰が・何を・どこまで対応するか」
を決めているかどうか。
これが、現場の混乱を防ぐ最大のポイントなのです。
歯科医院に求められる「最初の一歩」
歯科医院の規模や人員体制はさまざまです。
- スタッフ数が多く役割分担が進んでいる医院
- 少人数で日々の診療を回している医院
いずれにおいても共通して言えるのは、外国人患者対応を個人任せにしないことです。
翻訳ツールの使用方法、受付・診療・会計それぞれの対応範囲、困った際の相談先などを、簡単でもよいので共有しておくことで、現場の混乱は大きく減ります。
「完璧な体制」を整える必要はありません。
“想定しているかどうか”
それだけで、患者さんにも、スタッフにも安心感が生まれます。
これからの歯科医療における外国人患者対応
今回の調査結果から見えてくるのは、外国人患者対応が一部の医療機関だけの課題ではなくなってきているという現実です。
語学力や特別な人材の有無よりも、
- 院内での共通認識
- 最低限のルール
- 困ったときの判断軸
こうした「仕組み」があるかどうかが、対応の質を左右します。
外国人患者対応は、特別な取り組みではなく、これからの歯科医療における標準的な運営課題の一つとして、少しずつ向き合っていくことが求められているのではないでしょうか。