採用できないから“元スタッフ”に頼るという選択
求人で応募はあっても採用に繋がらない。
条件に合わなかったり、入職してもすぐに辞めてしまったり…。
採用の“成功”とは、ただ採用できればいいという話ではなく、定着して長く働いてくれることだと思います。
そんな人手不足の中、ある院長先生が出した案は「以前働いていて、とても優秀だったスタッフに連絡してみよう」というものでした。
円満退職の元スタッフに声をかけた結果…
院長先生の話によれば、その元スタッフは事務員として勤務中で、
勤務先の給与よりも高い条件を提示したところ、前向きな返答をもらえたそうです。
医院に来てもらって、仕事内容を院長自ら説明をし、勤務が決まったそうです。スムーズに再スタートを切れたように思えたのですが…。
たった1ヵ月で不満が爆発
勤務を始めて1ヵ月。
その方の口からは「以前とやり方が違う」「この方法はやめた方がいい」といった言葉が出始めたそうです。
さらには、周囲のスタッフに対しても、「私の時代はこうだった」「なぜこんな方法に変えたのか」と自分の考えを押しつけ、ついには院長の悪口まで。
事実確認のために本人に話を聞いたところ、何も答えてくれなかったそうです。
半年後、再び退職
勤務から3ヵ月が過ぎた頃には笑顔も消え、面談では
「以前は働きやすかったけれど、今はやり方が変わっていてついていけない。院長には“前と変わらないよ”って言われたけれど、現実は違った。実は退職した時も、院長の方針に納得できなかったのが本当の理由だったんです」
結局、その方は半年で退職されました。
その後、派遣スタッフでつないだが…
元スタッフが退職した後、人手不足を補うために派遣スタッフをお願いすることになりました。
しかし、実はこの派遣スタッフの勤務期間中も、元スタッフにはしばらく働いてもらっていました。理由は、派遣スタッフが仕事に慣れるまでの“つなぎ”としての役割でした。
ところがこの判断が、結果的には現場に悪影響を及ぼしました。
「どうせ辞めるから」といった割り切った気持ちで働く元スタッフは、周囲のスタッフに対して
- 「そんなやり方はやめたほうがいい」
- 「前はこうだった」
といった、自分の考えを押しつけるような発言を繰り返していて、
その言動が周囲のスタッフのやる気を削ぎ、チームの雰囲気を乱してしまうという結果に。
再雇用のリスクと準備の重要性
この話を通して感じたのは、再雇用という選択は慎重にすべきだということです。
もしどうしても再雇用を検討するのであれば、以下の点に注意すべきです。
- 現場の状況が変わっている状況を本人にきちんと説明する
- 実際に働いてもらい“体験期間”を設ける
- 過去の退職理由や、再雇用の経緯についても本人だけでなく迎え入れるスタッフにも共有する
- トラブルの兆候があればスタッフから報告してもらう体制をつくる
過去の実績より、今の現場に合うかどうか
再雇用=即戦力、という幻想に惑わされてはいけないと思いました。
当時は良い人材だったとしても、医院の方針や環境が変わっていれば、その人が活躍できるとは限りません。
人材不足の今だからこそ、“一見うまくいきそうな選択”に飛びつくのではなく、今の現場に本当に必要な人材かを見極める目が大切です。