歯科技工士の高齢化と人材不足が、いま全国的に深刻化しています。
中でも千葉県は、人口10万人あたりの就業者数が全国ワースト2位。
入れ歯や詰め物が必要な患者が増える一方で、製作を担う人材が減少しており、将来的には“入れ歯難民”が生まれる可能性も指摘されています。
地域医療の持続性が問われるいま、何が起きていて、私たちは何を考えるべきなのでしょうか。
■ 技工士の高齢化と廃業の波、千葉県で加速
厚生労働省の統計によると、2000年には全国で約3万7千人いた歯科技工士は、2024年には約3万1千人に減少。
さらに50代以上が占める割合は過半数を超え、廃業や引退が相次いでいます。
千葉県では、就業者数は923人と全国9位ながら、人口比では14.8人と全国ワースト2位。
県内に養成校がないため、若年層が県外に流出しやすい構造的な課題もあります。
結果として、入れ歯やかぶせ物の製作期間が長期化し、歯科医院や患者の双方に影響が出始めています。
■ 「技術職」でありながら「医療職」としての認知が薄い現実
歯科技工士は、患者一人ひとりの口腔状態に合わせて精密な技工物を製作する専門職です。
しかし、法制度上、患者の口腔内を直接触ることができず、医療チームの一員でありながら患者との接点が少ないのです。
また、公定価格(技工料)の低さも課題です。
高い技術を要する仕事でありながら、労働対価が十分に評価されていない現状は、若者にとって魅力的な職業とは言いがたい状況なのです。
■ 地域医療を支える「縁の下の力持ち」をどう守るか
歯科技工士は、歯科医療の裏方ではなく「地域医療の担い手」です。
食事をしっかり噛めることは、栄養摂取や健康維持、さらには認知症予防にも直結します。
入れ歯や補綴物が遅れれば、口腔機能の低下を招き、生活の質にも影響を与えかねません。
千葉県歯科医師会では、2021〜2024年度に「歯科技工士プロジェクトチーム」を設置し、
魅力発信や待遇改善に向けた提言をまとめました。
今後は、養成校の誘致や県内就業の支援策、さらに国による技工料の見直しなど、行政レベルの支援が求められています。
まとめ
歯科技工士不足は、単なる職種の減少ではなく、「地域医療の継続性」に関わる問題なのです。
目に見えにくい現場の努力を社会がどう支えるか。
医療機関・教育機関・行政が一体となって、技工士という職業の価値を再定義することが急務といえるのではないでしょうか。