歯科医院 「予防歯科」

歯科医院に通う患者さんの多くは、いまだに「歯が痛くなったら歯医者に行く」という考え方を持っています。治療が必要になったときだけ通院し、症状が落ち着けば足が遠のく――そんなサイクルが一般的です。
一方で、歯科医療の世界ではすでに「予防」の大切さが当たり前になっています。定期的なメンテナンスやクリーニングを行うことで、むし歯や歯周病を未然に防ぐことができ、患者さんの健康寿命を延ばすことにつながることは、先生方が日々の診療で強く感じておられることと思います。
しかし、患者さんの意識を変えるのは簡単ではありません。「予防は大切」と言葉で伝えても、来院につながらなければ意味がありません。


「予防」の大切さを伝えるメリット

予防を積極的に広報に取り入れることは、単なる患者教育にとどまらず、医院の経営やブランド力に大きなプラスをもたらします。

まず、長期的な患者定着につながるという点です。治療のみを目的に来院する患者さんは、症状がなくなれば通院をやめてしまいます。しかし「予防のために定期的に通う」という習慣が身につけば、数年単位で安定した来院が見込めます。これは小規模医院にとって経営の安定に直結します。

次に、自費診療への自然な導線になるという点です。ホワイトニングや矯正といった自費治療は、「予防意識が高い患者さん」ほど興味を持ちやすいです。定期的にメンテナンスに通っている方は、自分の口元や見た目への関心も高く、結果として自費診療に発展する可能性が高まります。

さらに、医院の信頼感を高めるブランディング効果もあります。「痛くなったから行く歯科医院」ではなく「健康を守るために行く歯科医院」というイメージは、地域での医院の立ち位置を大きく変えます。これは他院との差別化につながり、患者から「ここに通いたい」と選ばれる理由になります。


伝え方での具体的な工夫

では、予防をどう伝えればよいのでしょうか。ここではいくつかの実践的な方法をご紹介します。

  • 定期検診のお知らせカードやLINEリマインド
     次回の来院予定をカードに書いて渡したり、はがきで郵送したり、LINEでリマインド通知を送ることで、患者さんは「忘れずに通う」きっかけを得られます。シンプルですが継続率に直結する仕組みです。
  • ブログやSNSでの予防コラム
     「お子さんの仕上げ磨きを嫌がられたときの工夫」や「40代から気をつけたい歯周病のサイン」など、日常生活に直結する内容を短く発信することで、患者さんが「自分に関係ある」と感じやすくなります。
  • Googleビジネスプロフィールでの発信
     診療案内だけでなく「予防に力を入れています」という取り組みを投稿や写真で伝えると、検索している地域住民に強い印象を与えることができます。
  • 院内ポスターや小冊子
     待合室で自然に目に入る形で予防情報を提示することで、スタッフが口頭で説明する前に患者さんが理解してくれるケースもあります。

これらは大掛かりな仕組みではなく、少しの工夫で実現できるものばかりです。


医療広告ガイドラインの注意点

ただし、予防を広報に取り入れる際には「医療広告ガイドライン」を無視することはできません。たとえば「絶対に虫歯にならない」といった断定的な表現や、他院と比較して優位性を誇張する表現は認められていません。

安心なのは、「事実を正しく、わかりやすく伝える」ことです。
例:「定期的に検診を受けることで、むし歯や歯周病のリスクを早期に発見できます」
このような表現なら患者に行動を促しつつ、ガイドラインにも適合します。


まとめ

予防を広報の中心に据えることで、患者さんに安心感を与えるだけでなく、医院経営の安定、信頼性の向上、さらには自費診療への自然な流れまで期待できます。

広報は単なる宣伝ではなく、「院長先生の理念を患者さんに届ける手段」です。
「治す歯科」から「守る歯科」へ。予防を広報に取り入れることは、地域に選ばれる医院づくりの第一歩となるはずだと思います。