小規模歯科医院こそ見直したい「労働時間のルール」
歯科医院の勤怠管理、先生の医院ではどのように行われていますか?
小規模歯科医院では、「診療が終わって、片付けて、着替えて、帰る直前にタイムカードを押す」といった勤務の終わり方が日常的に見られます。一応、勤務時間のルールは存在しているものの、運用があいまいになっていたり、周知が不十分だったりするケースは少なくありません。
しかしこの“ゆるい勤怠管理”こそが、残業代未払いなどの労務トラブルになることもあるのです。
勤怠管理が曖昧なままになっていませんか?
小規模歯科医院でよく見られる勤怠に関する“あるある”には、以下のようなケースがあります。
- スタッフによってタイムカードの打刻タイミングがバラバラ
- 終礼後の私語や私用の片付け時間も「勤務時間」とみなされている
- 勤怠ルールが文書化されていない
- 残業時間の計算が職場の“慣例”で処理されている
このような曖昧さを放置しておくと、スタッフとの間に不公平感が生まれたり、退職時に残業代をまとめて請求されるといったトラブルに発展することもあります。
厚生労働省が示す「労働時間管理」の原則
厚生労働省が公開しているガイドラインでは、労働時間の管理は原則1分単位で行う必要があるとされています。
労働時間の把握は1分単位で行うことが基本です。
仮に端数処理(例:10分未満の切り捨て)を行っている場合であっても、
実際に労働が行われていた時間については賃金を支払う必要があります。― 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」より
つまり、「10分単位で切り捨てて残業代を支給しているから問題ない」という考え方は、法的にはリスクがあるということになります。
トラブルを防ぐための3つの対策
① 勤怠ルールを明文化する
まず大切なのは、あいまいなルールを“文書化”して、スタッフ全員に周知することです。例えば以下のような項目を明確に定めておきましょう。
- 出勤・退勤の定義(診療終了後、何分までを勤務時間とするか)
- タイムカードの打刻ルール(押すタイミング・場所)
- 残業代の支給基準(1分単位で支給など)
- 終業後の私用行動は勤務時間に含まれないこと など
スタッフが片付けや着替えを“業務”として行っている場合は、その時間も労働時間として扱う必要がある点にも注意が必要です。
② 勤怠の「見える化」を進める
紙のタイムカードや手書き出勤簿では、正確な勤務実態を把握するのが難しい場面もあります。
最近では、スマホやPCで出退勤を記録できる無料の勤怠管理アプリやクラウドサービスも増えていて、小規模医院でも導入しやすくなっています。
スタッフの意識が変わるきっかけにもなりますので、「デジタル化による見える化」も選択肢のひとつです。
③ ルールの定期見直しと、スタッフへの説明を欠かさない
ルールを作って終わりではありません。医院の診療体制や人員の変化に応じて、年に1度は見直しと周知の機会を持つことをおすすめします。とくに新人スタッフに対しては、入職時のオリエンテーションで丁寧に伝えることが大切です。
「うちは小さい医院だから」では済まされない時代
「スタッフ数人の個人医院だから、そこまで厳密にしなくても…」と思っている先生も少なくありません。
しかし、労務トラブルが起きるのは大規模医院ばかりではなく、むしろルールが曖昧な小規模医院ほどリスクが高いという現実があります。
スタッフを守ることは、医院を守ることにもつながります。今一度、自院の勤怠ルールを見直してみませんか?
📌こんなチェックをしてみましょう
- タイムカードを押すルール、全員に共有できていますか?
- 残業代は、実際の勤務時間に基づいて支給されていますか?
- 勤怠記録は、あとから証明できる形で残っていますか?
もし少しでも不安がある場合は、小さな見直しから始めるのが得策です。