昔の「怖い歯医者さん」から、居心地の良い空間へ

さまざまな歯科医院を訪問していると、昔ながらの「怖くて冷たい病院」という印象とは異なり、まるでおしゃれなカフェのような温かみのある医院が増えてきていると感じます。清潔感はもちろんのこと、インテリアや照明、音楽などにも工夫が凝らされ、患者さんがリラックスできる空間づくりが進んでいます。


立地に合わせた工夫で通いやすさを演出

歯科医院の立地によって、その雰囲気や工夫の方向性も変わってきます。

たとえば住宅街にある医院では、広い駐車場はもちろん、託児所が完備されていたり、ベビーカーでもスムーズに入れるスロープが設けられていたりと、小さなお子さん連れでも安心して通えるような配慮がされています。
一方で駅チカの歯科医院は、通勤や通学の合間に通いやすい立地を活かして、短時間での治療やクリーニング、ホワイトニング、インプラントなどの審美歯科に力を入れている医院が多く見受けられます。

また、中心部から少し離れた医院では、カフェを併設したり、敷地内にキッチンカーを設置してコーヒーを提供するなど、「少し遠くても行きたい」と思わせるようなユニークな取り組みもあります。これらの工夫は、患者さんへの配慮はもちろん、医院で働くスタッフや求職者にも好印象を与える要素となっています。


◎予防歯科の時代、だからこそ「通いやすさ」がカギ

今、歯科業界では「治療から予防へ」という流れがますます加速しています。国の政策でも「国民皆歯科健診」の構想が掲げられ、今後、定期的な歯科健診が義務化される動きも進んでいます。

その背景には、「健康寿命を延ばすためには、お口の健康が欠かせない」という考えが広まり、歯科医院に“治しに行く”のではなく、“健康を保ちに行く”という意識が定着し始めていることが挙げられます。
このような中、メンテナンス中心の通院サイクルが当たり前になる今後において、患者さんが気軽に・継続して通いたくなる環境づくりがますます重要になっていくと思います。

「歯医者=イヤな場所」というイメージがあるままだと、定期的に足を運ぶことが心理的な負担になってしまいます。だからこそ、空間や雰囲気で患者さんの心をやわらげ、「ここなら続けて通えそう」と思ってもらえるような工夫が求められているのです。


五感を使った「リラックス空間」のつくり方

建物そのものを建て直すのは現実的ではないかもしれませんが、今ある空間でも十分に工夫ができます。

たとえば、感染予防対策として多くの歯科医院に導入されている空気清浄機に、アロマ機能を加えるだけでも、あの緊張感を誘う消毒液のにおいをやわらげ、心地よい香りに変えることができます。さらに、院内のBGMにスターバックスのようなリラックスできるJAZZを流せば、まるでカフェにいるような落ち着いた雰囲気を演出することも可能です。


「通いたい」だけでなく「働きたい」歯科医院へ

こうした空間づくりは、患者さんの安心感につながるだけでなく、医院見学に訪れた求職者にも好印象を与えるポイントになります。「ここで働いてみたい」と思ってもらえる雰囲気づくりは、採用活動にも良い影響を与えます。

治療技術や設備の充実だけでなく、空間や雰囲気づくりにまで気を配ることで、これからの歯科医院はさらに選ばれる存在へと変わっていくのではないでしょうか。

サポートが必要なときは、専門家に相談を

「空間づくり」や「医院の魅せ方」といった取り組みは、すぐにすべてを変えるのは難しいかもしれません。しかし、小さな工夫の積み重ねで、患者さんや求職者に選ばれる医院へと近づくことは可能です。