表に出にくい「本音の退職理由」
歯科医院の退職理由は「家庭の事情」や「体調不安」と伝えられることが多いですが、その裏には表に出にくい“本音”が隠れているケースが少なくありません。本記事では歯科医院の退職理由の本音に焦点を当て、離職が起きる本当の背景と、未然に防ぐための視点を解説します。
スタッフが退職するとき、理由としてよく聞くのは
「家庭の事情で…」
「体調のこともあって…」
「やりたいことが見つかって…」
どれも嘘ではありません。
しかし現場を長く見ていると分かることがあります。
本当の理由は、別のところにあることが多いという事実です。
一般企業の調査でも、退職理由の“本音”として挙がるのは次のような内容です。
- 人間関係の悩み
- 給料への不安
- 仕事内容が合わない
- 長時間労働・業務過多
- 評価されていないと感じる
- 職場の雰囲気に馴染めない
- 将来性や成長の不安
そしてこれは、歯科医院でもほぼ同じ傾向が見られます。
「うちは問題ない」は、実は危険信号
院長先生とお話していると、よくこうした声を耳にします。
「うちは人間関係は悪くないと思います」
「給料も地域相場よりは出しているはずです」
もちろん本当に良い環境の医院もあります。
ただ、ここに大きな落とし穴があります。
“問題が表に出ていない”だけで、存在していないとは限らないということです。
歯科医院は小さな組織です。
だからこそスタッフは、
- 空気を壊したくない
- 先生に迷惑をかけたくない
- 言っても変わらない気がする
そんな思いから、不満や不安を飲み込んでしまいます。
そして限界が来たとき、初めて口にする言葉が
「家庭の事情で退職します」
なのです。
歯科医院で起きやすい“本音の正体”
これらの退職理由は、歯科医院では次のような形で現れやすくなります。
■ 人間関係の悩み
小規模ゆえに逃げ場がありません。
一人との関係の悪化が、職場全体のストレスにつながります。
■ 評価されていないと感じる
「できて当たり前」「ミスだけが目立つ」
この構図が続くと、やる気は静かに削られていきます。
■ 仕事内容が合わない
「歯科が好き」ではなく、
「受付がしたい」「アシストがしたい」など、
役割への希望とのズレがあることも少なくありません。
■ 長時間労働・業務過多
人手不足の医院ほど、できる人に仕事が集中します。
頼られているのに、心は疲弊していく状態です。
■ 将来性や成長の不安
教育の仕組みが曖昧だと、
「ここにいて自分は成長しているのだろうか」
という不安が積み重なります。
スタッフは「辞めたい」とは言わない
スタッフは、いきなり「辞めたい」とは思いません。
最初は
「ちょっとしんどいな」
「最近つらいな」
「なんとなく合わないかも」
この“なんとなく”の段階でケアできるかどうかが、離職を防げるかどうかの分かれ道です。
そのサインは
- 表情が減る
- 発言が減る
- ミスが増える
- 指示待ちになる
といった小さな変化として現れます。
退職は「その人の問題」ではない
退職が起きると、
「本人のメンタルが弱かったのかな」
「最近の若い子は続かない」
と考えてしまうこともあるかもしれません。
しかし多くの場合、退職は
“環境と人のミスマッチ”の結果です。
- 期待
- 役割
- 評価
- 負担
- 将来像
このバランスが崩れたとき、心は静かに職場から離れていきます。
大切なのは「辞めさせない仕組み」ではなく「話せる空気」
本音の退職理由を防ぐ最大の方法は、意外とシンプルです。
「困っても大丈夫」と思える空気をつくること。
- ミスした時に責められない
- 意見を言っても否定されない
- 小さな頑張りを見てもらえる
この積み重ねが、
「ここなら話してもいい」
という安心感になります。
第三者だからこそ聞ける「本音」がある
「話せる空気づくりが大切」と分かっていても、実際には壁もあります。
- 院長が相手だと本音は言いづらい
- 評価に関わる人には弱音を見せにくい
- 「不満を言っている人」と思われたくない
これは珍しいことではなく、むしろ小規模な歯科医院ほど起こりやすい状況です。
そこで私たちは、1on1(個別面談)の代行を行っています。
院長先生には直接話せないこと
日々の業務の中で静かに積み重なっている不安
誰にも言えずに抱えている迷いや悩み
こうした声は、外部の第三者だからこそ話せることが少なくありません。
私たちは単なる聞き役ではなく、
スタッフの思いを整理し、
必要に応じて院長先生へ伝えるべき内容を丁寧に橋渡しする、
**「医院とスタッフをつなぐ架け橋」**の役割を担います。
目的は、誰かを守ることでも責めることでもなく、
すれ違いを減らし、続けられる環境をつくることです。
本音の退職理由が「退職」という形になる前に。
静かなサインを拾い上げるための一つの方法として、このような関わり方もあります。
まとめ
退職理由の多くは、突然生まれるものではありません。
日々の小さな違和感が積み重なった結果です。
表に出にくい“本音”を理解することは、
スタッフを管理するためではなく、
医院というチームを守るための視点です。
スタッフが辞める理由を知ることは、責めるためではなく、
“続けられる職場”をつくるための第一歩なのかもしれません。