― 育児・介護休業制度を“形だけ”で終わらせないために ―
2025年4月の育児・介護休業法の改正を受けて、制度の見直しや整備を進める歯科医院も増えてきました。
しかし現場では、こんな声も聞こえてきます。
「制度があっても、実際どう使ったらいいのか分からない」
「復帰後の働き方まで考えていないので、不安が残る」
制度を“整えること”と“使えること”は別物です。
制度があるだけでは、スタッフは安心して申出できません。
安心して使い、戻ってこられる環境があるからこそ安心して申し出ることができるのです。
この記事では、制度を“運用できる仕組み”として機能させるために、歯科医院ができる3つのステップをご紹介します。
◆ステップ1「制度をどう伝えるか」をデザインする
制度の周知は、「就業規則に書いてあるから大丈夫」では十分ではありません。
多くのスタッフは、「実際に制度を使うときに、何をどうすればいいのか」が分からず、不安なまま抱えていることが多いのです。
✅ポイントは、“明文化”と“ストーリー化”
- 利用の流れ、申出のタイミング、対象条件などを紙に書いて明確にしておく
- 過去の利用者がいれば、「〇〇さんはこの制度を使って、今こう働いています」という実例として共有
形式的な案内よりも、具体的な“流れ”と“体験談”が、スタッフの安心感につながります。
◆ステップ2「制度を使ったあと」のフォロー体制を決めておく
制度の取得自体よりも、スタッフは、その“あと”の働き方のほうが大きな不安材料です。
- 「戻ったとき、自分の居場所があるだろうか」
- 「戦力外扱いされないだろうか」
- 「気まずくならないか」
これらを払拭するためには、休業制度を使った復職後の働き方について、スタッフ全員にシェアしておくことが大切です。
✅事前に整えておきたい体制
- 復職前の面談ルール(時期・目的)
- “慣らし勤務”の導入(いきなりフルタイムに戻さない)
- 業務引継ぎ・フォローアップの体制整備
制度を「取ったら終わり」にせず、「戻ったあとも安心」という空気をつくることで、離職リスクを下げることができます。
◆ステップ3チーム全体で支え合う“合意形成”
制度は、本人と院長だけが理解していればよいものではありません。
現場の協力体制があって初めて、制度は機能します。
「自分が制度を使ったら、他のスタッフに申し訳ない」
「迷惑かけるぐらいなら、辞めたほうがいいかも」
そんな“遠慮”が生まれないよう、あらかじめチームとしての合意形成をしておくことが重要です。
✅やるべきこと
- ミーティングなどで、院長の想いや制度の趣旨をスタッフ全体に共有
- 「誰かが制度を使うときは、みんなで支え合おう」という共通認識の醸成
小さな職場だからこそ、“ひとりが使う”=“みんなで支える”というチームの在り方が求められます。
◆制度は「あるかどうか」ではなく、「どう使えるか」
形式的に制度を導入しても、実際に使われなければ意味がありません。
本当に大切なのは、制度の“中身”と“使われ方”をデザインすることです。
- 誰に相談すればいいのか
- どんな手順で申出ができるのか
- どのようなサポートがあるのか
そういった情報を整理し、「制度=安心できる仕組み」として、医院全体に共有することが、これからの医院づくりには欠かせません。
◆まとめ
✅ 制度は“ある”だけでは不十分。「使える」ための設計が必要
✅ 復帰後まで見据えた“支援体制”づくりが離職を防ぐ
✅ チームとして支える合意形成が、制度の価値を高める