妥協ではなく、「選び直す」という採用
歯科医院の採用で「妥協してでも人を入れたほうがいいのか」と悩む院長先生は少なくありません。
実際、歯科医院の採用は、応募があっても「この人だ」と思える人材に出会えないケースが多いのが現実です。
顧問先の歯科医院で、採用について院長先生とお話ししていたときのことです。
「応募はあるんですが、正直“この人だ”と思える人がなかなかいなくて……。
でも、来てくれた人を一先ず採用するしかないのかな、と考えてしまいます」
多くの院長先生が、一度は感じたことのある本音だと思います。
人手不足の中で、
- 応募が来ない不安
- 現場が回らない焦り
- スタッフへの負担
こうした状況が重なると、つい「今回は妥協しようか」という気持ちが生まれます。
ただ、先生ご自身もおっしゃっていました。
「妥協して採用した場合、やっぱりうまくいかないことが多いんですよね……」
これは、私たちが多くの歯科医院を見てきた中でも、ほぼ共通している事実です。
「妥協」という言葉を、少し言い換えてみる
私はこのとき、「妥協」という言葉を、別の表現に置き換えてお話ししました。
それは、妥協する採用ではなく、
「選び直す」「確認する採用」という考え方です。
人材を“条件だけ”で判断するのではなく、
- 医院の考え方
- 大切にしている価値観
- 日々のルールや判断基準
これらをきちんと伝えた上で、
「それでも一緒に働きたいか」を相手に選んでもらう、というステップです。
入職前に“紙を見ながら”すり合わせる
そのために大切なのが、入職前の説明を曖昧にしないことです。
- 医院の方針
- スタッフとして求めている姿勢
- 守ってほしいルール
これらを口頭だけで済ませず、
明文化したものを用意し、紙を見ながら一つずつ説明する。
そして、
「ここまでが当院の考えですが、問題ありませんか?」
と、相手に確認する時間をしっかり取る。
この段階で、
- 納得できる方は前向きに入職を決めてくれます
- 納得できない方は、無理に合わせることなく辞退されます
どちらも、医院にとってはプラスです。
後から「こんなはずじゃなかった」というズレを減らせるからです。
過去の応募者を“活かす”という選択
もう一つ、印象的だった出来事があります。
直近の面接を振り返る中で、先生からこんなお話がありました。
「以前面接した方の中に、やっぱり気になる人がいて……
今からでも打診できませんか?」
実は、その医院では過去の応募者をきちんとリスト化していました。
そこで、私がその方に直接お電話でご連絡し、
改めて状況をお伺いしたところ、
「もう一度お話を聞いてみたいです」
と前向きなお返事をいただけました。
結果として、
再度医院に来ていただき、先生ご本人から直接お話をされる流れになりました。
採用は「縁」だが、「準備」で結果は変わる
採用はよく「ご縁」と言われます。
確かに、タイミングや巡り合わせはあります。
しかし、
- 医院の考えを言語化しているか
- きちんと伝える準備ができているか
- 過去の応募を無駄にしていないか
こうした準備の有無で、結果は大きく変わります。
妥協して採用するのではなく、
「選び直す」「確認する」という一手間をかけること。
それだけでも、
採用の失敗は確実に減らせると、私たちは現場で感じています。