スタッフが“退職代行”で突然辞める前に、院長としてできること
先日、面接の場で、ある歯科衛生士の方が、以前勤務していた歯科医院を「退職代行サービス」を使って退職したというのです。
同僚とは良好な関係。でも院内には根深い問題が…
話によると、スタッフ間の人間関係には特に問題はなく、むしろ良好だったそうです。
しかし、院長の強い言動や一方的な指示、パワハラと感じられる対応が日常的にあったとのこと。
その医院では、以前から辞めるスタッフが院長との間で揉める様子を何度も見てきたそうで、「自分もきっと同じように責められる」と思い、どうしても直接辞めたいと怖くて言い出せなかったといいます。
最終的に、その方は「退職代行サービス」を利用して退職しました。
「最初からお願いすれば、あんなに悩まずに済んだのに」と語っていたのがとても印象的でした。
医療業界でも増加する“退職代行”の利用
退職代行とは、本人に代わって第三者が職場に退職の意思を伝えてくれるサービスです。
近年、医療・介護業界での利用が増えており、特に歯科医院では院長との関係性が原因で利用されるケースが少なくありません。
このサービスを利用するスタッフの多くは、次のような事情を抱えています:
- 過去に他のスタッフが辞める際にトラブルになっていたのを見た、あるいは聞いた
- 院長に何を言っても聞いてもらえなかった
- 強い叱責や感情的な対応が日常的にあった
- 「辞める」と伝えたことで怒られたり、責められるのが怖い
こうした不安から生まれた「最後の逃げ道」とも言えます。
退職代行には3つのタイプがある
退職代行サービスには以下のような種類があります:
- 弁護士事務所
- 退職だけでなく、未払い残業代や損害賠償など法的交渉まで対応可能 - 労働組合(退職代行ユニオン)
- 交渉権限があるが、法律上の代理権はない - 民間企業による退職代行サービス
- 基本的には「退職の意思を伝える」だけで、交渉はできない
対応力や信頼性に差があるため、利用者は自分の状況に合ったサービスを選んでいます。
院長としてできる“退職代行を防ぐ視点”
突然の退職や退職代行を防ぐためには、問題が大きくなる前にスタッフの不安や違和感に気づける関係性づくりが大切だと思います。
スタッフの悩みや不安に“早く気づける”関係性をつくる
表情、態度、勤務態度の変化など、小さなサインに気づく力が求められます。
日頃からコミュニケーションが取れていれば、不満や不安の“兆し”を見逃さずに済みます。
定期的な1on1ミーティングの活用
業務の進捗だけでなく、気になることや困っていることを話す機会を設けることで、不満が溜まる前に対応できます。
「対話の余地がある職場」だと伝える姿勢
「話を聞いてくれる」「本気で向き合ってくれる」
そうした信頼感が、突然の退職や代行のような事態を未然に防ぐカギとなります。
最後に
退職代行は、あくまで“最後の手段”です。
スタッフ自身もできれば使いたくないと思っていることが多く、使うことを選択したスタッフは「直接伝えるのは怖い」と感じるほど、院内での関係に行き詰まりを感じていたことの表れとも言えます。
もし、自院でそういったケースがあった場合、「なぜそうなってしまったのか」と一度立ち止まって振り返ることが、次のスタッフとの信頼構築に生かされるはずです。
これからの時代、「スタッフが辞めない職場づくり」こそが、歯科医院経営の大きな課題であり、価値になっていくのかもしれません。