写真や絵を使っても患者さんに伝わらないのはなぜ?
「歯科説明が伝わらない原因は何だろう?」
写真や絵を使って説明しているのに、患者さんが理解してくれない…そんな悩みを抱える先生も少なくありません。
「専門用語をなるべく使わないようにしているのに、患者さんに伝わらない」
「写真や絵を見せても理解してもらえない」
診療の現場で、そんなもどかしさを感じる先生は少なくないと思います。
一生懸命に説明しているのに伝わらない――その背景には、どんな原因があるのでしょうか。
患者さんの“知りたいこと”と先生の“伝えたいこと”
実はここに、大きなズレが隠れています。
患者さんが一番知りたいのは、
- 「この痛みは取れるのか」
- 「治療はどのくらいかかるのか」
- 「費用はいくらくらいかかるのか」
といった“結果”や“見通し”に関することです。
一方で先生は、
- むし歯や歯周病の進行状態
- 写真やレントゲンに表れる所見
- 治療が必要な医学的根拠
を丁寧に説明しようとします。
つまり、患者さんの関心は「結果」、先生の説明は「原因」というすれ違いが起きているのです。
写真を見ても伝わらない理由
例えばレントゲン写真を見せながら「ここに黒い影があります」と説明しても、患者さんの頭の中はこうです。
- 「この黒い部分はどれくらい悪いの?」
- 「歯を抜かないといけないの?」
- 「治療はどれくらいで終わるの?」
つまり、患者さんは“写真の意味”よりも“自分にとっての答え”を探しています。
だからこそ、いくら丁寧に画像を示しても、ピンと来ないまま終わってしまうのです。
伝わる説明に変えるために
ではどうすればいいのでしょうか。
ポイントは 「説明の順番」と「補足の仕方」 です。
- まず患者さんが知りたいことに答える
(例:「この治療で痛みは取れます」「通院は3回ほどで終わります」) - そのうえで「なぜそうなるのか」を、写真や絵を使って補足する
この順序に変えるだけで、患者さんは安心した状態で話を聞けるようになり、写真や絵の意味も理解しやすくなります。
おわりに
「伝わらない」のは、先生の説明が足りないからではなく、
患者さんの“知りたいこと”と“先生が伝えたいこと”の順番が少し違うだけだと思います。
写真や絵は、その差を埋めるための有効なツールです。
大切なのは、まず患者さんの安心につながる答えを伝え、その後に写真や絵で理解を補うことで、説明はぐっと患者さんの心に届きやすくなると思います。