逆パワハラ」という言葉をご存じでしょうか?


パワハラは上司から部下に向けて行われるイメージが強いですが、歯科医院では新人衛生士から先輩衛生士へ、あるいはスタッフから院長先生へ向けての逆パワハラも実際に起こっています。本記事では、その具体例や原因、院長先生が取るべき対策について詳しく解説します。

パワハラの定義を改めて確認

まずは基本的な「パワーハラスメント(パワハラ)」の定義ですが、厚生労働省の指針では、以下の3つを満たす行為をパワハラとしています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

出典:厚生労働省「パワハラ防止指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf

患者さんの前での叱責や、新人を無視する行為などは典型的なパワハラです。
ではその逆の 「逆パワハラ」 とはどのようなものでしょうか?


逆パワハラとは?

逆パワハラとは、部下や後輩が上司や先輩に対して行うハラスメントを指します。
歯科医院では、新人衛生士が先輩衛生士に対して、またはベテラン衛生士が院長や事務長に対して行うケースが考えられます。

逆パワハラのポイントは次の3つです。

  1. 自身の立場を利用した言動であること
  2. 業務上必要な範囲を超えていること
  3. 相手の就業環境に悪影響を与えること

逆パワハラの具体例

例1:注意を「パワハラ」と切り返す

新人衛生士に仕事の改善を指導したところ、「それ、パワハラですよ」と言われた。
このような発言が繰り返されると、先輩は注意をためらい、指導の質も下がります。結果として新人は成長せず、先輩にばかり負担がかかってしまいます。

例2:立場を逆手にとった発言

「そんなことも知らないんですか?」
「なんで私がやらないといけないんですか?」
新人がこのように返答すれば、通常は「パワハラ」とされる発言です。立場が逆であるがゆえに、指導する側が何も言えなくなってしまうケースです。

例3:業務指示を「パワハラ」と拒否

診療が長引いた際、「最後まで残ってほしい」と依頼すると「残業の強要ですか?パワハラですよ」と返される。
正当な業務指示を拒否する口実に「パワハラ」という言葉を使う典型例です。


なぜ逆パワハラが起こるのか

歯科医院で逆パワハラが増えている背景には、次の2つの要因があります。

  1. 人手不足
    「辞められると困る」という状況をスタッフに見透かされている場合があります。だからこそ、強気な態度が出やすいのです。
  2. 関係性の構築不足
    「自分が働いてあげている」と勘違いし、先輩や院長へのリスペクトを失っている。関係性が歪んだまま放置すると、逆パワハラは深刻化します。

院長先生ができる対策

1. 関係性を整える

「辞めないでほしい」一心で注意を避け続けると、院内の秩序は崩れます。
お互いを認め合い、正しい意見が通る環境をつくることが大切です。

2. 人事評価制度の導入

評価基準が曖昧だと、不満や誤解が生まれやすくなります。
スキルや態度を客観的に評価できる仕組みを整えることで、逆パワハラ防止にもつながります。

3. 採用時点でのミスマッチ回避

医院の価値観や雰囲気と合わない人材を採用してしまうと、後にトラブルの火種になります。
採用段階で医院にマッチする人材を見極めることが、最も効果的な予防策です。


まとめ

逆パワハラは「注意できない職場」を生み、医院全体の成長を妨げます。
人手不足や関係性不足といった背景を理解し、 採用・評価・関係性づくり の3つの観点からアプローチしていくことが良いと思います。