信頼関係の中で起きた、ある日の出来事

ある日、突然スタッフ二人から
「少しお時間をいただけますか」と声をかけられました。

歯科医院でスタッフトラブルが起きたとき、どう対応すべきか。これは、私が事務長として勤務していた歯科医院で実際に起きた出来事です。

その瞬間、正直に言えば
「退職の相談だろうか…」
そんな考えが頭をよぎりました。

ただ、スタッフ二人で話があるということに、
それとは違う内容だと直感しました。

「お金が無くなったんです」

二人の口から出たのは、思いもよらない言葉でした。

お財布の中のお金が無くなった。
しかも一度ではなく、二度だと言いました。
二度目は1万円という金額だったため、
「勘違いではない」と確信したそうです。

鍵のないロッカー、置き場の定まらないスタッフのバッグ

当時の医院では、
ロッカーに鍵をかけることが徹底されておらず、
バッグを椅子の上に置くスタッフもいました。

スタッフの入れ替わりや人数の変化により、
ロッカーが兼用になったり、
バッグの置き場が十分に確保できていなかった時期でもあります。

お互いを信用しているからこそ、
「まさか、この中に…」
そう思うだけで、強い不信感が生まれてしまいます。

院長への報告と、戸惑い

私はすぐに院長へ報告する前に、
まずはスタッフ本人たちの話を丁寧に聞きました。

このことを院長に伝えると、
「今まで一度もそんなことはなかった」
と、強い驚きと戸惑いを見せていました。

犯人探しをすれば、
医院の空気は一気に壊れてしまう。
かといって、何もしなければ同じことが繰り返される。

事務長として、
「医院としてどう対応するか」が問われる場面でした。

私が提案した対応

私から院長へ、次の2つを提案しました。

1つ目は、
医院の管理体制の不備として、無くなったお金は医院側で返金すること。

2つ目は、
再発防止のため、簡易的な金庫を設置すること。

金庫は「使いたい人が使う」形とし、
設置理由については
「スタッフ体制の変化に伴い、貴重品管理を見直すため」
と全体に説明しました。

あくまで
・特定の誰かを疑わない
・貴重品は各自で管理する
というスタンスを崩さないことを大切にしました。

「正義」と「医院を守る判断」

犯人探しをすれば、
現場は混乱し、スタッフ同士が疑心暗鬼になり、
それまで上手く回っていた状況を乱すことになります。

正義として考えれば、
犯人を見つけ、罰することが正しいのかもしれません。

ただ、その正義を貫いた場合、
現場がどうなるのか、
その後、医院がどうなっていくのか。

そこまで考えたとき、
この対応が、当時の医院にとって
最も現実的で、守るべきものを守れる選択だったのではないかと
今でも思っています。

お金が無くなったスタッフに対しては、
院長とともに深く謝罪しました。

医院としての管理が不十分だった点は、
否めません。

人が集まる場所では、
想像もしていなかったことが、
医院の規模に関係なく起こります。

その都度、
「何が正しいか」だけではなく、
「どうすれば医院を守れるか」を考え、
柔軟に対応していくことが、
事務長としての役割だと感じています。

管理は「信頼していない」からではない

結果として、
お金が無くなる事態はそれ以降起こらず、
犯人探しをすることもありませんでした。

この出来事は、
私にとっても大きなショックでした。

そのようなスタッフがいるとは思っていないのと、
管理の甘さを突きつけられた出来事でもあります。

管理体制を整えることは、
スタッフを疑うことではありません。

むしろ、
信頼関係を守るために必要な仕組みなのだと思います。

これは、
私が事務長として歯科医院に勤務していた頃の、
実際にあった出来事の一つです。

ディー・プラス・エス株式会社では、
こうした医院の規模に関わらず起こり得る「見えにくい問題」にも目を向け、
歯科医院とスタッフ、双方が安心して働ける環境づくりを
サポートしていきたいと考えています。