歯科医院の現場では、歯科衛生士と歯科助手が協力しながら診療を支えています。しかし、両者の役割が曖昧なまま教育が進むと、人間関係の摩擦が生じやすく、離職につながるケースも少なくありません。
ある医院では、中途入職した歯科助手に対し、教育係の歯科衛生士が高いレベルの業務を求めました。一方で歯科助手は「自分は無資格だから」という言葉を繰り返し、業務範囲を自ら制限。教育者の指示を受け入れず「これは私の仕事ではない」と拒否する場面が増え、両者の不満が募り、職場の雰囲気が悪化しました。院長は「何か空気が悪い」と感じていたものの、具体的な理由までは把握していませんでした。
面談を通じて明らかになったのは、業務範囲の不明確さが根本的な原因であるということです。

問題の本質

  • 役割の固定観念:「無資格だからできない」という思い込みが、業務拒否につながる。
  • 教育の不十分さ:入職時に業務範囲を明示せず、専門書を渡すだけでは理解が進まない。
  • コミュニケーション不足:教育者と被教育者が互いに「自分が正しい」と譲らず、対立構造が固定化。
  • 業務範囲の理解不足:歯科衛生士は自分の業務を理解しているが、歯科助手は業務範囲を理解していないことが多い。さらに、歯科医院ごとに求められる業務が異なるため、混乱が生じやすい。

歯科助手業務の特性


歯科助手業務は、覚えることが多く、また医療人としての自覚も必要です。他の職種から入職した方にとっては、慣れない専門用語や診療補助の流れに戸惑うことも多く、大変な負担となります。だからこそ、しっかりとフォローし、業務を段階的に覚えられるような教育体制が不可欠です。

改善の方向性

  1. 業務範囲の明文化
    歯科助手として担うべき業務をリスト化し、入職時に明確に伝える。これにより「やるべきこと」と「やらなくてよいこと」が整理され、教育者も指導しやすくなる。
  2. 教育の段階的設計
    いきなり高度な業務を求めるのではなく、ステップを踏んで習得させる仕組みを整える。
  3. 院長の関与
    教育を現場任せにせず、院長自身が役割分担を説明することで、スタッフの納得感が高まる。
  4. 課題の可視化と改善
    チェックシートを活用し、できていない業務を確認することが重要です。その上で「何がわからないのか」を明確にし、どうすればできるようになるのかを教育者と共に考えていくことで、業務習得のスピードが上がり、離職防止にもつながります。

まとめ


人間関係のトラブルは、個人の性格や能力だけでなく「役割の曖昧さ」から生じることが多いものです。歯科助手と歯科衛生士の業務を明確にし、教育の仕組みを整えることが、スタッフの定着と医院全体の安定につながります。
特に歯科助手業務は覚えることが多く、医療人としての自覚も求められるため、他職種からの入職者には丁寧なフォローが欠かせません。さらに、歯科医院ごとに求められる業務が異なることを踏まえ、院長先生が主体的に「自院での業務範囲」を定義し、スタッフに伝えることが重要です。教育体制の整備は「人材育成」だけでなく「医院経営の安定」に直結する課題だと思います。