歯科医院におけるセミナー教育は、医院の成長やスタッフ育成に欠かせない要素の一つです。
実際には、「セミナーに参加しても現場が変わらない」と感じている院長先生も少なくありません。
私は事務長として勤務していた頃、多くのセミナーに参加してきました。事務長向けのもの、マネジメントを学ぶもの、歯科医院に特化した運営セミナーなど、その数は数えきれません。
特にマネジメント系のセミナーは種類が非常に多く、「一体どれを、どこまで実践すればいいのか分からなくなる」と感じたこともあります。中には、半年から1年に及ぶ長期コースも多く、毎回大量の宿題が出されていたこともありました。
歯科医院向けセミナーの実情
歯科医院に特化したマネジメントセミナーの多くは、スタッフ数が5人以上の中規模以上の医院を想定しているものが少なくありません。また、医院全体で参加する形式のセミナーも多く見られます。
一方で、歯科業界のセミナーはマネジメントだけに限りません。
- 歯科医師向け・歯科衛生士向けの学術セミナー
- 症例検討や治療方針を中心とした座学・実技
- 新しい機材や歯ブラシなどのデモンストレーション
- 接遇研修、歯科医院で使う英会話、トリートメントコーディネーター研修
- 物販に関する知識(歯磨剤の成分や身体への影響など)
その中でも印象に残っているのは「医療人のためのメイクセミナー」です。医療従事者であっても、患者さんに安心感を与える身だしなみや清潔感は欠かせません。「すっぴんに近いメイクは失礼にあたる」という考え方は、当時とても新鮮でした。
こうして振り返ると、本当に多くの学びの機会がありました。そして、こうした環境を用意してくださった院長先生には、今でも心から感謝しています。
セミナー参加がうまくいかないケース
すべてのスタッフが前向きに学びに向き合えるわけではありません。
家庭の事情で参加が難しいスタッフ、そもそも学ぶ意欲がないスタッフもいます。そうしたスタッフに無理に参加を促すと、否定的な発言で周囲のモチベーションを下げてしまうこともあります。
実際、顧問先の院長先生からこんなお話を伺ったことがあります。新人を含む歯科衛生士4名を学術セミナーに参加させたところ、結果として「失敗だった」と感じたそうです。
一人当たり決して安くない参加費をかけたにもかかわらず、参加したスタッフからは
- 内容がよく分からなかった
- 現場でどう活かせばいいのか分からない
- 講師への批判的な感想
といった声が上がり、医院での実践にはほとんどつながらなかったとのことでした。
セミナーは「参加させる」だけでは意味がない
このような話を聞くたびに感じるのは、セミナーそのものが悪いのではなく、参加の目的と受け皿が整っていなかったという点です。
- なぜこのセミナーに参加するのか
- 何を持ち帰り、何を現場で変えるのか
- 誰が、いつ、どのように実践するのか
これが共有されていなければ、どれほど質の高いセミナーでも「高額な勉強会に参加しただけ」で終わってしまうことです。
学ぶ文化がある歯科医院の特徴
新卒スタッフを多く採用している歯科医院を見ていると、共通して感じることがあります。それは、
- 学ぶことが前提となっている
- 段階的な教育体制が整っている
- 「できなくて当たり前」から育てる文化がある
という点を感じます。
このような医院では、セミナーは特別なイベントではなく、成長のプロセスの一部として自然に位置づけられています。
小規模歯科医院との違い
一方、小規模歯科医院では、
- 即戦力
- 安定
- 今のやり方を大きく変えない
といった価値観が重視されやすく、学びに対しても「必要最低限」「業務に直結するもののみ」となりがちです。
これは良し悪しではなく、医院のフェーズや考え方の違いです。ただ、この違いが、スタッフの成長機会や将来のキャリア観に影響を与えていることは間違いないと感じています。
学ぶ姿勢が、医院選びとスタッフの質を分ける
学び続けたい人、変化を楽しめる人、将来的にキャリアの幅を広げたい人。
安定して長く働きたい人、今のスキルを活かして無理なく働きたい人。
どちらが正しいということではありませんが、合う歯科医院はまったく違います。
セミナーに行かせる・行かせない、という表面的な話ではなく、
この医院は、学びをどう位置づけているのか
学んだことをどう活かす文化があるのか
歯科医院の成長とスタッフの質を分ける大きな分岐点なのではないのではと思います。