使われていないマニュアルが、医院の働き方を曇らせていた
歯科医院のマニュアル見直しは、業務の透明化とスタッフの働き方を整えるために欠かせません。
歯科医院には、チェックシートや業務マニュアルが必ず存在します。しかし、その多くは“存在しているだけ”で、現場とはズレたまま更新されていない――そんな状況は珍しくありません。
先日、ある医院で行ったDHミーティングでも、まさにその「機能していない資料」が大きなテーマとなりました。スタッフと一緒に内容を確認していくと、現場の実態との違いが次々と発見されました。そこで、新たな項目の追加や見極めポイントの明確化など、資料の全面的な見直しを行うことにしました。
前回のコラムも是非お読みください
「チェックシートが機能しない医院の共通点 — 現場ミーティングから見えた課題」
チェックシートを整えることで見えてきた“本当の現場”
スタッフからの依頼でチェックシートに目を通したところ、改善すべき点が多く見えてきました。
・わかりやすい画像の追加
・作業の流れが一目でわかるフローチャートの挿入
・見極めの基準となるポイントの追記
これらを加え、資料はぐっと現場で使える形に近づきました。その後、院長へ進捗報告を行い、院長の考える改善方向とも一致していることを確認。まさに「この医院は変わる」と感じられるほど、順調な流れでした。
しかし、変化の途中で思いがけない出来事が起こります。
「これ全部やるんですか?」――スタッフの言葉が示した根本課題
新しいチェックシートを渡し、業務の把握状況を確認してもらおうとしたところ、歯科助手スタッフから返ってきたのは
「これ全部やるんですか?」
「無理なんですけど」
という、驚くほどストレートな言葉でした。
話を聞くと、彼女自身の中で「自分が担当する業務の範囲」が曖昧で、どこまで求められているのかがわかっていなかったことが原因でした。これは、個人の問題ではなく、医院全体として“業務範囲を明確にしてこなかったこと”が招いたものです。
スタッフには、「院長先生の言葉で業務範囲を明確にしてもらうので、あなたは何も言わなくて大丈夫です」と伝えると、安心したように笑顔で「ありがとうございます」と返ってきました。
見直しを通じて浮かび上がったのは“不公平感”と“見える化”の重要性
今回の見直し作業で明らかになったのは、マニュアルが曖昧なままだと、
・やっているつもりのスタッフ
・実は業務をほとんど行っていなかったスタッフ
・その状況に気づかずモヤモヤしているスタッフ
という構図が生まれ、知らぬ間に“不公平感”が蓄積していくということでした。
チェックシートやマニュアルは、ただ仕事の手順を示す資料ではありません。
医院の文化をつくり、チームの方向性をそろえ、働きやすい環境を整える“土台”です。
今回の見直しを通じて、業務の見える化が医院に与える影響は計り知れないと改めて感じました。小さな違和感に目を向け、現場の声をもとにアップデートしていくこと。それこそが、未来志向の医院づくりにつながっていきます。