年明け早々、ある歯科医院の院長先生から相談を受けました。

「頼りにしていたスタッフから、結婚の報告とあわせて妊活もしていると聞きました。仕方がないことだとは思うのですが、先のことを考えなければいけなくて…」

歯科医院という少人数組織では、一人のスタッフの存在が医院全体の運営に与える影響はとても大きいものです。特に、診療を理解し、院長の考えや医院の流れを把握している“頼れるスタッフ”であればなおさらです。

この相談は、決して特別な話ではありません。今、多くの歯科医院で同じようなことが起きています。


若手が求める「成長」と、ライフステージ後に求める「働きやすさ」

若手の歯科衛生士は、

  • 学べる環境があるか
  • スキルアップできるか
  • 将来のキャリアが描けるか

といった点を重視して医院を選ぶ傾向があります。

一方で、結婚・妊娠・出産・育児というライフステージに入ると、

  • 勤務時間の融通
  • 家庭や育児を優先できる体制
  • 無理のない働き方

を重視するようになるのは、ごく自然なことです。

「考えが変わった」のではなく、生活そのものが変わるのです。


正社員で入職したスタッフからの相談

この歯科医院には、 「3歳の子どもがいるが、正社員として働きたい」 という強い希望を持って入職したスタッフがいました。

1年間勤務する中で、

  • 出退勤時の保育園送迎
  • 帰宅後の家事・育児
  • 日々積み重なる体力的・精神的負担

これらを両立する難しさに直面し、 「今後も同じ勤務形態で働き続けるのは難しい」 と、勇気を出して相談がありました。

院長先生は悩みながらも、

  • 正社員からパートへの転換
  • 出退勤時間の調整

を決断されました。

スタッフを守る、という意味ではとても大切な判断だったと思います。


その“優しさ”の先に起きる、別の課題

ただし、こうした判断の先には、必ず別の課題が生まれます。

彼女が担っていた業務を、

  • 誰が
  • どのように
  • どこまで

カバーするのか。

結果として、他のスタッフの負担は確実に増えます。

「じゃあ、この仕事は誰がやる?」 「この業務は分担できる?」

そんな話し合いが、院内で始まっていました。

実際には、この医院ではDHミーティングを開き、スタッフ全員で話し合いを重ねています。

「じゃあ、この仕事は誰がやる?」 「この業務は分担できる?」

といった問いを投げかけ、

  • 一人に負担が偏っていないか
  • 今のやり方が本当に最適か

を、立場に関係なく意見交換しています。

また、 「結果がどうなるかわからないものは、まずやってみる」 「うまくいかなければ、別の形でやり直せばいい」

という共通認識のもと、試行錯誤すること自体を前向きに捉える文化が育ち始めています。


院長が考え始めた“次の一手”

院長先生は、感情論ではなく、現実的にこう考えています。

  • 求人を早めに出さなければいけない
  • 妊娠のタイミングは誰にも分からない
  • だからこそ、今のうちに採用と教育を同時に進める必要がある

そして重要なのが、 「特定の人にしかできない状態」を作らないことです。


頼れるスタッフを“教育係”として育てるという選択

今回、院長先生が最初に取り組もうとしているのは、

▶ 妊活中の、いま頼りにしているスタッフを ▶ 今後入職してくるスタッフの「教育係」として育てること

です。

この歯科医院には、すでにスタッフ教育用のチェックシートがあります。

このチェックシートは、 私と歯科医院のスタッフが一緒に作り上げたものです。

  • 教える内容に抜け漏れはないか
  • 属人的な教え方になっていないか
  • 誰が教えても、同じ水準まで到達できるか

これらを改めて確認し、 「このチェックシートで本当に問題ないのか」 を徹底的に見直そうとしています。

感覚や経験に頼るのではなく、 “仕組み”で教育を回す準備を始めたのです。


正解はない。でも、備えることはできる

ライフステージの変化は、止められません。

誰が悪いわけでもなく、 どんなに話し合っても、完全な正解はありません。

ただ一つ言えるのは、

▶ 起きてから慌てるか ▶ 起きる前提で備えるか

で、医院の未来は大きく変わるということです。


ディー・プラス・エス株式会社として伝えたいこと

私たちは、

  • スタッフを守ること
  • 医院を守ること

このどちらか一方ではなく、 両立させるための仕組みづくりを大切にしています。

今回のケースは、 どの歯科医院でも起こりうる、極めてリアルな話です。

だからこそ、 「うちも、そろそろ考えないといけないかもしれない」 そう感じた院長先生にとって、 このコラムが“考えるきっかけ”になればと思っています。

次回は、 ▶ 教育係を任せる際の注意点 ▶ チェックシートを形骸化させない工夫 ▶ 採用と教育を同時に進める際のポイント

について、もう一歩踏み込んでお伝えしていきます。