~歯科医院でも見直したい“教育の質”~

「仕事がつまらない」「職場に行きたくない」と感じている人が増えている
そんな調査結果が、報告されています。

例えば、ある調査では95%の人が「会社に行きたくない」と回答し、26%が「仕事がつまらない」と感じているというデータもあります。

「職場に行きたくない」と感じる理由の上位は以下の通りです。

  • 人間関係 45.5%
  • 業務量 39%
  • 仕事が合わない 31.8%

このような結果は、企業だけでなく歯科医院でも他人事ではありません。


歯科医院でも起きている「定着しない」問題

厚生労働省の調査では、学校卒業後に転職経験がある若年労働者の割合は42.7%。さらに、「今後転職を考えている」と回答した人は31.2%にのぼり、以前の調査より6ポイント上昇しています。
その理由で最も多かったのは、「仕事が合わない」でした(41.9%)。

これは、歯科助手や受付など異業種からの転職者が多い歯科医院でも起こりうることです。
「せっかく採用しても、すぐ辞めてしまう」「人材が定着しない」
こうした声が増えているのも、スタッフと“仕事の意味付け”がうまくかみ合っていないことが一因かもしれません。


「仕事の向き合い方」を教えていますか?

「仕事が合う・合わない」は、やってみて分かる部分もあります。
しかし実は、その人が持つ価値観や考え方、仕事への捉え方によって感じ方は大きく変わるのです。

キャリア理論で有名なエドガー・シャインは、キャリア選択の土台となる「キャリア・アンカー(錨)」という概念を提唱しています。これは以下の3要素から構成されます

  1. 動機(自分は何をやりたいのか)
  2. 価値観(何に意味を感じるか)
  3. 能力(得意なこと)

このうち、「価値観」が今の仕事とズレていると、“この仕事は合わない”と感じてしまうのです。

だからこそ、新入スタッフの初期教育では「仕事に対する捉え方」を伝えることが重要です。
単に「やり方」や「マナー」を教えるだけでは足りません。


「作業」ではなく「仕事」をしていると感じてもらうために

スタッフが仕事を“作業”と捉えると、やりがいを感じられず、「つまらない」「向いていない」と感じがちです。
一方で、「これは患者さんにとって大切な役割だ」「医院の信頼に関わる仕事だ」と意味付けできれば、モチベーションも高まります。

新人教育では、「ビジネスマナー」や「社会人としての心構え」ももちろん大切ですが、
それ以上に「この仕事の価値」や「医院で働く意義」について、しっかり言葉で伝えることが、定着率アップへの近道です。


歯科医院の教育体制、見直してみませんか?

厚労省の調査では、定着のための教育訓練を行っている企業は48.5%。
その多くはOJT(現場指導)に偏りがちで、OFF-JT(座学研修など)は35.2%にとどまっています。

歯科医院でも、実際の業務の中で教えるOJTが主流です。
しかし、仕事への向き合い方や「なぜこの仕事が必要か」といった本質的な部分は、OJTだけではなかなか伝わりません。

早期離職が続いていると感じる場合は、
「スタッフ教育の内容が“作業の習得”に偏りすぎていないか?」
「仕事の意味を伝える仕組みがあるか?」
という視点で、一度見直してみることをおすすめします。


まとめ:採用よりも、“定着と活躍”のための教育がカギ

採用活動はもちろん重要ですが、本当に大切なのは“採用後”の教育です。
仕事の意味を理解し、自らの価値観とつなげることができたスタッフは、主体的に行動し、長く医院に貢献してくれる存在になります。

「うちの医院、最近すぐ辞めてしまう人が多いな…」
そんなときこそ、教育の“中身”と“伝え方”を見直すタイミングかもしれません。